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サギデカ・第5話(最終回 [サギデカ]

「自分もツラいんだからとか、そんなの不正をおこなったり、ひとを切り捨てたりする理由にはなりません」



「今後は “振り込め(詐欺)” のハコはすべて海外に移してください。(掛け子は日本から派遣するため、渡航費や宿泊費はバカになりませんが)リスクヘッジです。日本では警察の検挙能力が格段に上がってるんです。むかしだったら、ガサ入れで掛け子が捕まっても、嫌疑がはっきりしなくて不起訴処分になることが多かったんです。でも、いま そういことはありません。被害の事実を確定させて、確実に起訴できるよう捜査方法が徹底されてるんです。でも、東南アジアなんかだと、警察はアジトを押さえることはできても、証拠保全の能力がないんですね。だから結局、日本の検察は立件することはできないんです。いや、中国はダメなんです。金融詐欺が厳罰化されたんで、よけい量刑が重くなっちゃいました。東南アジアのどこかにしてください」



「暴力団の資金調達の柱だった闇金業が、闇金融対策法の成立を機に、一気に衰退したのは ご存知ですか。社会的には いいこと だったかもしれませんが、桑原さんは お金が集められなくなってしまいました。殺人やら、抗争やらが頻発して、それはもう ひどいことに なってしまったんです。(組長の)桑原さん自身も殺されかけたんです。それを知ってぼくは、金なんか もっと平和的に集めるべきだって思ったんです。(振り込め詐欺は)大事なひとのためならって出す善意の金です。脅しも暴力もない、平和的で、いい方法だと思いました。金さえ回っていれば、裏の社会も落ち着く。結果的に、凶悪犯罪も減る」



「時代、再分配、不公平・・・。言葉のせいかなあ、(振り込め詐欺を正当化する)あなたの話には、ひとの顔が見えません。 “振り込め” の掛け子をやってた青年が言ってたんです。『相手に顔なんかない』って。そう自分に言い聞かせて、彼は見えない相手から お金を奪っていたんです。でも、たぶん彼は気づいたんだと思います。自分も顔のない、奪われる側の人間なんだって。それで彼は、今度は自分から奪っている人間の顔を見に行きました。彼がなにを感じたかは、わたしには わかりません。でも、(殺されそうになった)彼が見たものは、時代とか、再分配とか、不公平とか、そういう あやふやな なにか ではなくて、生々しい ひとりの、他人から奪っても平然としていられる人間の顔です」



「一人ひとりに共感してたら、なにも できませんよ。ま、そういうところは、社会的に有意義な仕事も、犯罪と少し似ているかもしれない。ぼくも(がんの治療薬開発を進めているとき)一人ひとりの顔なんか見ません。だって、神様だって見てないですからね。無作為に はずれクジを引かされる人間は いなくならないんです。そういう ひとたちのことを、いちいち考えても苦しいだけでしょ。だったら もう、ひとくくりにして考えたほうが建設的なんです。彼らは世の中のための・・・犠牲だ」


NHK/2019年9月28日放送
【脚本】
安達奈緒子
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