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やすらぎの刻 ~道・第126話 [やすらぎの刻]

「テレビに出てくる渋谷の駅前交差点――。あの交差点は70数年前、瓦礫と絶望に覆われていた。破壊された街は、コンクリートと瓦礫の山に覆われ、腹をすかした焼け出された人々と、ようやく帰還した復員兵とが、ただ茫然と立ちすくんだ街だった。われわれには重機もブルドーザーもなく、1個のコンクリート、1本の鉄筋を取り除くにも、一片一片を手で取り除き、隙間を作るより術がなかった。頼りになるのは、空腹の中で生き残った人々が持つ、体の中のわずかなエネルギー・・・。しかし、どういう奇跡が起きたのか、われわれは それを成し遂げてしまった。あの不可思議な復興のエネルギーが、いまだに わたしには信じられない。そうして、復興を成し遂げてしまった当時の若者は、力を使い果たし、年老い、思い出に生きるしかなく、その時代を知らない若者たちが、スマホをいじりながら街を闊歩する。彼らは、歩き回るアスファルトの下に、あのころの先人たちの どれほどの苦労が、汗と涙と無数の死体が、埋まっているかに気づこうともしない」



「まもなく米兵が上陸しているからな。女こどもは米兵に絶対に顔を見せてはいけない。ことに後ろを振り向くと、身を許すという意味だから注意せよ。もし運悪く取り押さえられたら、『ノー、ノー』。そして、目下 生理中という意味の『メンス』。『メンス』という言葉を叫べ」


テレビ朝日/2019年9月30日放送
【脚本】
倉本聰
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