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浜の朝日の嘘つきどもと [単発]

「勝手の権化か、おまえは」



「夢なんかね、一個も かなってないんですよ。作りたいものなんか作らせてもらえない。でもね、一回だけ、こんなぼくでもチャンスがあって、当時 流行したキラキラした青春もの(の映画)――。一生懸命 撮ったけど、大コケです。制作費はあったはずなのに、どういうわけか、現場にお金がなくて・・・だから、現場も雰囲気 悪くて。安いのは おまえが無名だからだって、スタッフにも言われたりして。やっときたチャンスだと思ったけど、その映画やりたかったかって言ったらね、そうじゃないスよ。好きなのはコーエン兄弟みたいな映画で・・・最低ですよね。スタッフからも見透かされてたんスすよ。そりゃ、誰もついてこないスよ。だったら、思い切ればよかったんだ。本当にやりたい映画じゃないけど、その次にやりたいものを撮るために、この映画で死ぬほど頑張るから、だから、力 貸してくれって。覚悟 決めりゃよかったんスよ。それができなかった。あっちの顔色うかがい、こっちの顔色うかがって、結局なーんもできなくて、気づいたら独り。2作目なんて、もうないですよ。だからね、夢なんて、なにひとつ かなってなんか ないんです。自称、映画監督。映画作りなんて、金持ちが趣味でやるしかないんじゃないスかね――って、これも負け惜しみなんすかね。そうか、オレ、負けたのか。でも、なにに勝とうとしてたんでしょうね」



「(あんた)稀代のクソ映画、撮ったひとだ。オレ、観ちゃったんだよ。(中略) 試写会 応募したら、当たっちゃって。金 払ってねえのに『金 返せ』って思った映画、初めてだったよ」



「(デコさんが)余命いくばくもないってやつか。あれ、20年前から言ってかんな」
「閉店セールって言われてるらしいよ」



「優しさに満ちた1円と、下心に満ちた1億円があるとして、実際、役立つのはどっちだ。ただ不幸な目に遭ったひとより、より困難な なにかが あったひとのドラマを大衆が求めるんだとしたら、オレはそのゲスさを逆手にとって、徹底的に悲惨な人間 探し出して、そんで、世界中に訴えたいんだ・・・福島に、相馬に目を向けさせるためにな。(そんなやり方をしなくてもいいと思うか?) 甘いな。 “そんなやり方” ってのを徹底しなきゃ、いまは世界中の誰も振り向いちゃくれないぞ。アフターコロナだなんだ、コロナで世界中が大変だよ。だから、ただ大変さを訴えたとこで、『大変なのは、おまえだけじゃねえ』って、スルーされんのがオチだ。でも、考えてみろ。原発事故で被害を受けたひとは、世界中で どれだけいる? 悲しくて、くやしくて・・・いや、そんな言葉じゃ片づけられないぐらい傷ついて。事故のことを忘れたいひとたちだって たくさんいるよ。でもな、それでも これはな、絶対に忘れちゃいけないんだ。忘れさせないために、より一層、大衆が惹きつけられるものを提示しなきゃ、誰も振り向いてくれねえんだよ。憐れみ、上等じゃねえか。オレがドキュメンタリーを作る。それで、ここに世界中が目を向ける。オレの作った映画を、あったけえ場所でポップコーン食いながら、『かわいそう』って、上から目線で観てたやつらが、いつの間にか感情移入して涙を流す。オレがクソ人間だということは、そこには関係ねえ。憐れみでもなんでも構わないだろうが。カッコつけてる場合じゃねえ。金がいるんだよ。新たな災害が来ようと、復興は終わってねえんだ。原発に、台風に、コロナだぞ。それでも歯食いしばって耐えろってさ、神様はどんなプレイさせんだよ。だから、オレは作るんだ。街のひとらに なんべん殴られてもな。もちろん、そんな きれい事だけじゃ、オレはやらねえよ。オレだって、この街を利用して、監督として有名になりたいっていう欲に まみれてるわけだしな。けどさ、オレの欲で この街がちょっとでも よくなるんだとしたら、それってスゴクね? 欲って、夢があるよ」



「おまえ、なんで監督になろうって思ったの」
「映画が好きだったからだよ。(中略) 嘘に嘘を重ねてるのに、そこに本当があるからだよ」



「あたしが死にたいなって思ってるときにさ、先生が言ったんだよね――『100年後を想像してごらん。あんたなんて、生きてないから』って。もうちょっと いいこと言えよって思ったけど・・・でもまあ、そうだよね。そんなに急いで死ななくたってさ、人間、いつかは骨になるんだから」


tvk/2021年1月2日放送
【脚本】
タナダユキ
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絶メシロード 新春スペシャル [絶メシロード]

「店員さんの この距離のつめ方、常連さんの居座り感、びっしり並んだ お品書き、茶ばんだ漫画――。絶メシ店のツボを押さえている」



「アンティーク感ゼロ目の掛け時計、置時計、木彫り、人形、食器、鉄器(が所狭しと飾られている店内)――。圧迫感はあるが、統一感はない」



「洋食屋さんでの2品オーダー。経済的にも、カロリー的にも、暴挙だけど、旅の締めくくりだから いいじゃないか」



「道を間違えても、それはそれでいいんだよ。また新しい景色が見えるから」


テレビ東京/2021年1月1日深夜放送
【脚本】
森ハヤシ/【原案】絶メシリスト(博報堂ケトル)、畑中翔太
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