「作曲してたのが あたしじゃないってのが、そんな いけないことかしら。アイドルとプロデューサー、芸人と放送作家、世間には いくらだって共作関係は存在してる。彼らにダマされたって訴える人間がいるかしら。あたしの仕事はひとの心を動かすことなの。仮にあたしが世間を欺いていたとして、それによって誰か傷ついたひとがいた? 逆よね。暴かなければ、誰も傷つかなかったし、みんな幸せでいられたのに。夢の舞台裏をさらす野暮な おこないこそ断罪されるべきなんじゃないかしら」



「ひとって、意外なほど他人の顔を見ていないのよね。髪型やメガネ、装飾品などを指す心理学用語・アーチファクトに個性が強く表れている場合、目、鼻、口や、輪郭といった、本来の顔立ちは ほとんど覚えていないケースが多い。(中略) 強すぎる印象が、逆に記憶をぼやけさせ、その印象しか残らない」



「足が不自由なフリをしたり、施設で育ったと偽ることで、世間からの注目を確かに集めた。けど、望んだ注目を浴びたことで、彼はひとを殺す羽目になり、結局、逮捕されてしまった。肥大し続ける自我は、いずれ自らの身を亡ぼす――」


BSテレ東/2020年4月25日放送
【脚本】大浦光太/【原作】佐藤青南