「こんなもの、ただの道具にすぎん。なにが(武士の)魂だ。刀など、使えなくなったら捨てるだけだ」



「怖いか? 恥じることではない。大切なのは、恐怖から逃げぬことだ」



「オレは いまから こいつを斬るわけだが、こいつの名前はなんだ。年はナンボだ。親兄弟はいるのか。なにも知らねえ。オレはこいつの顔すら知らねえ。・・・いや、違う。オレは こいつのことなら、なんだって知ってるぞ。こいつはオレの大っ嫌いな侍で、憎たらしい敵だ。ひとじゃねえ。だから、斬ってもいい」



「(動きを)読むのではない。知るのだ、相手の殺気から」



「たくさん ひとを斬ることだ。なるべく たくさん殺すんだ。ひとりでも多く。そのうち、何人 斬ったかなど興味もなくなる。殺した相手の顔すら忘れてしまう。やがて、ひとを殺した日は気分よく眠れるようになる。自分が殺されたかもしれないと思うと、ぐっすり眠れる」



「なにが侍だ。てめえの腹 切って、喜んどんのは、頭のおかしいやつだけじゃ」


NHK/2023年1月3日放送
【脚本】宮藤官九郎/【原作】松本次郎、永井義男