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やすらぎの郷・第89話 [やすらぎの郷]

「あのころ ほとんどの日本人は、あの戦争は日本が正しい、聖戦だって信じていたし、事実、相当な作家だとか画家が戦場に送り出されて、戦争報道に協力させられてた時代だったからね。ぼくも聞いたけど、かなりの大家が戦争報道に協力してるんだよ。それが日本人を無意識に洗脳して、無数の若者を戦場に駆り立て、数えきれない戦死者を出した――。たしかに それも事実なんだけどね」



「平和になったいまだから、みんな、戦争はイヤって大きな声で言うけどさ、あのころは口が裂けもそんなことは言えないムードだったし・・・。当時は違ったんだよ。愛国心に燃えてたしね。いまの感覚の目で見る戦争と、当時の日本人が思う戦争とじゃ、圧倒的に感覚が違うよ」



「オレはね、開戦のとき、国民学校の一年生だったんだ。戦争の中で育った口さ。なんの疑いもなく軍国少年だったね。日本が負けるなんて、思ってもみなかったよ。そう、あれは四年生、昭和19年か。配属将校といわれる軍人が国民学校へ乗り込んできてね、みんな、校庭に整列させられて・・・。その将校がいきなり みんなに言ったんだ。『特攻を志願する者は一歩前へ』――。全員、ためらわず一歩前へ出たね。心じゃ、多分、怯えてたと思うんだ。だって、特攻ってのは自爆だからね。いまのイスラム過激派の自爆テロとおんなじさ。だけど全員、みんな前へ出たんだ」


テレビ朝日/2017年8月3日放送
【脚本】
倉本聰
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