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ここは今から倫理です。・第4話 [ここは今から倫理です。]

「その場のノリに流されて悪に行くのは、人間として当然だ。人間の本性は悪。荀子もそう言ってる。カントだって言ってる――『人間は気ままに生きると、争う悪になる』って。そうだ、ハンナ・アーレントもな――『悪は陳腐、悪は月並み』って。誰もが当たり前のように、簡単に悪に染まっていく。それがこの世界の真理だ」



「あなたは彼らの思想を都合よく解釈しているだけです。荀子も、カントも、アーレントも、人間は当然悪だから悪を容認するとは言っていません。彼らは、だからこそ、ひとが悪を乗り越えるために、なにをすべきか語っているのです」



「アイヒマンは元ナチス親衛隊で、ホロコーストを主導した人間だ。まあ、ユダヤ人大虐殺の実行犯って思えばいい。どんなやつだったと思う? はたして、裁判で人々の前に現れたアイヒマンは、ヒトラーに心酔した狂った差別主義者だったか? 冷徹な快楽殺人鬼か? そうじゃない。やつはごく普通の、真面目なドイツ人だった。上からの命令に忠実に従っただけの、従順な官僚。わかるか。命令されたから――それだけの理由で、人間は毒ガスの噴射スイッチも、原爆の投下スイッチも、簡単に、躊躇なく押せるんだ。誰もが当たり前のように悪なんだ。そうだよな、先生。名だたる哲学者たちが何人も、人間の悪性をどう乗り越えるべきかについて、頭を悩ましてきた。そして その都度、答えも出した。それで人間は変わったか。(中略) 世界は変わったか。人間によって人間の命が奪われる。そんな悲劇は、もうこの世界じゃ起きないか。違うよな。あんただって・・・いや、あんたこそ、よくわかってるはずだ。ひとは悪を克服できない。誰もがアイヒマンで、ユダだ」



「(彼女は)学校という “正しい場所” では、あんなに死にたがっていたのに・・・。悪を憎むべきだけれど、彼女はその悪のおかげで、いまも生きている。でも、近藤くん。あなたが もし その悪に触れ、怖いと思い、学校という “正しい場所” を不快に思っていないなら、二度と こんなこと しないでください。ちゃんと考えなさい・・・自分にとって、なにが善か悪か くらい」


NHK/2021年2月6日放送
【脚本】
高羽彩/【原作】雨瀬シオリ
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