SSブログ

神様のカルテ・第4話(最終回) [神様のカルテ]

「大学の医学部に付属する病院――、大学病院には600床のベッドと、1000人を超える医者がいる。大学医学部各科の教授陣を頂点に、准教授、講師、助教、大学病院所属の医局員、大学院生、研修医、非常勤の医者たちが、巨大なピラミッドを形成し・・・わたしは限りなく下っ端の大学院生という身分なのだが、最先端医療を施す大学病院は、身分差、規則、慣例、建て前、理不尽、不条理、矛盾、そこに権威という大屋根が載った伏魔殿だ」



「ここに10人の飢えて死にそうな子供がいる――。手に入るパンはひとつだけだ。きみなら、どうするかね? 10人の子供にひとつのパンを10等分して与えるか? それでは、ひとりも助からない。では、いちばん弱ってる子供に、すべてを与えるか? それでは、残り9人の子供が助からない。わたしなら、助からないと判断した子供にはパンを与えない。余力のありそうな子供にもパンを与えない。じゃあ、誰に与えるか。わたしだったら、そのパンによって確実にいまを生き延びられる子供だけを選んで与える。そして、次のパンが手に入るのを待つ。ここは本庄病院ではない。特別なパンを持つ、特別な病院であることを忘れないように」



「若者の理想を優しく握りつぶしてあげるのが、オレたち先輩の仕事だ」



「腹に力を込めて、患者の前では堂々としているのだ。医者の うろたえが、患者に いちばん こたえる」



「大学病院ていうところは、これまで見たこともない病気をかかえた患者さんがいらっしゃいます。そして、その画像を一目見ただけで診断を絞れる医者もまた いるんです。各分野のオタクのような医者が、角突き合わせて答えを出していく――。それが大学病院ですよ、栗原先生」



「ぼくらが立てる治療方針は、正解か不正解か、イエスかノーかの、二者択一じゃない。患者がいちばん大事にしているものを、ぼくらも一緒に大事にして第三の道を探す――。完治を目指して探すんだ、臨機応変に」



「わたし、ずっと病理希望でしたけど、(第四内科)三班の研修でわかったことがあるんです。患者は顕微鏡の中じゃなくて、目の前にいる――」



「あなたに あと どれほどの時間があるか、医者のわたしにも わかりません。しかし、もし あと3カ月なら、いまを生きることは、意味がないですか。あと1カ月なら、いま死んだほうがマシですか。わたしは断言する。そんなことは断じてない」



「(また飢えた子供とパンの話ですか。しかし)このパンは小さくはない。むしろ大きく、しかも実はたんまりとある。それらのパンは大学病院で後生大事に抱え込まれている。だが、配り方は複雑怪奇。医者は規則にがんじがらめで、たったひとりの膵がん患者を退院させることすら容易ではない。さて、きみなら どうするかね? わたしなら、それらのパンをぶん取って、飢えた子供たちに与えます。大学病院は貴重な、特別なパンを、配ること自体を忘れている」



「大学病院には様々な医者が集まっている。実にバラエティ豊かで、まとまりのない、まとまり切れない集団だ。わたしはね、栗原くん。多くの医者が一丸となった医局より、まとまり切れない困った医者がたくさんいる医局のほうが、優れた医療を提供できると信じている」


テレビ東京/2021年3月8日放送
【脚本】
森下直/【原作】夏川草介
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。