「(治療するかどうかは、患者本人が決めることだなんて)そういうの、正しいかもしれないけど、優しくないです。(中略) わたしたち、がんのことなんて、お医者さんほど わからないんですよ。何人もの がん患者を診てきたプロとして、どう思うのか教えて欲しいんです。患者の自主性(を尊重する)なんて、逃げないで下さい」



「一度、患者さんの会に行かれてみてはどうでしょう。すいません(そんなことしか言えなくて)。わたしは医療のプロですが、患者のプロではないので」



「自立っていうのは、迷惑かけられるひとを何人か見つけるところから始まるんですよ」



「(つわりで苦しい)いまこの瞬間だけは、誰がなんと言おうと、拓哉より わたしが『家庭内しんどい選手権』勝てる自信あるわ」



「この社会で たくさんの他人と生きていて、わがままをぶつけられるひとには、そうそう出会えません。出会えたらラッキーです。だから、もし そんなひとと出会えたら、勇気をもってエゴをぶつけ合ってみてください」



「先生は長く生きられないと知って、娘を授かりました。将来『無責任だ』『迷惑だ』と言われても、『おとうさんが、どうしても会いたかったから』『ぷっくぷくの脚が可愛くてね、ずっと さわっていたいから』『おかあさんのピアノを聴かせたかったから』としか答えられません。もし将来、みんなが彼女に出会うことがあったら、『おとうさんは めちゃくちゃ幸運なひとだった』と教えてやってください」


NHK BSプレミアム/2023年3月6日放送
【脚本】吉澤智子