ウツボカズラの夢・第８話（最終回） [ウツボカズラの夢]
「この家を壊したかって？ そんなこと できるわけがない。この家はわたしが来たときから壊れてた。わたしはそれを教えただけ」
「わたしを こんな子だって決めつけたのは、そっちじゃないですか。わたしが自分から『わたしは無害な田舎者です。誰の邪魔もしません』って言いましたか。『わたしは あなたたちには、なにをしたって かなわない』って言いましたか。勝手に決めつけて油断してたのは あなたたちでしょ。こんな子なんかに自分たちが負けるはずないと思っていたわたしが、想像より しぶとくて、それを裏切られたみたいに言うのはやめてください。わたしはここにきてから毎日、ただ『明日どうしよう』と思っていただけです。いつまでいるのって聞かれることに、おびえないでいられるように、ここで両脚で立っていたかっただけです。（中略） わたしのほうが あなたたちより生きて行くのに必死なだけ。それを責めるんですか」
「自分が家を出ても、ついてきてくれるかって（わたしに）聞きましたよね。ついて行くかもしれないし、行かないかもしれない。迷います。でも、隆平さんはどうですか。迷いますか。３万円だけ持って放り出されて、行く場所もなくて、生きていく自信がありますか。迷うことだって、それなりに腹が座ってないと できないんですよ。隆平さんは最初からこんな広い場所で自由にできて、さあ、これから なにして生きていこうって迷ってるだけでしょ。ここから出て行くのに、なにがいちばんラクか わからなくて困ってるだけでしょ。失敗したら逃げて帰るところがあるくせに、どうして失敗を怖がるのか全然わからない」
「安くても素敵なものはたくさんあります。おいしいものもある。でも、一流のものはきっと高いんです。オレはそういうものとは縁のない人生です。（奥さんは）離婚して、一流と縁が切れますか？」
「生活がかかると、お互い、引けないケンカになるのね」
「あの家より いいものを見つけたら、わたしは いつでも出て行く。あなたは（家を）守ってきたひとだけど、わたしは手に入れた人間。どっちが強いと思います？」
フジテレビ／2017年9月30日深夜放送
【脚本】藤井清美／【原作】乃南アサ
ウツボカズラの夢・第６話 [ウツボカズラの夢]
「若いころの感覚って、死なないのよ。体の中に残ってる。道を歩いてたら、誰かに声をかけられたこと。新しい洋服を着て出かけたら、誰かに『似合いますね』って言われたこと。だから、いまでも『きれいですね』って言われたら、わたしのことだと思っちゃう。でも、いまは着てる服のことで、わたしじゃないの。すっごく恥ずかしい。すごく自分にがっかりする。わたしはもう、そういうこと言われる対象じゃないんだって言い聞かせるんだけど、なかなか若いころの感覚は消えてくれないの」
フジテレビ／2017年9月16日深夜放送
【脚本】藤井清美／【原作】乃南アサ
ウツボカズラの夢・第５話 [ウツボカズラの夢]
「役に立たない思い出なんか、ただの感傷だ。もう高校生には戻れない。あとは生きていくために、働いて、食べて、ひとに頭を下げて、耐えて、泣いて、恨んで・・・いつの間にか年老いていく」
「頑張らなくても居続けられる場所ってあるかな。お母さんが生きてたときは、（中略） べつに どこにいたって堂々と立ってていいし、息していいと思ってたんだけど、いまは立つのが大変」
「東京って、ただそこにいるだけで、ものすごくお金がかかるんです。ここ（実家）はお金はいらないけど、まわりから どんどん壁が迫ってきて、押しつぶされそう」
「手の届くところにあるものを食べるのと、他人をだまして そのひとの皿の上のものを食べるのは、違う話だ」
「あたし、東京にいたときに、毎日つらかったんです。毎日毎日、明日どうしようって考えてました。でも、いまは（生まれ故郷で）過去のこと（学生時代の楽しかった思い出）ばっかり話してる。いまは１年前とか、２年前の話だけど、いつか５年前、10年前になる。でも、鹿島田家に・・・（東京の）あの家にいたら、きっとずっと “明日の話” をしていられる。あの家は嫌いだけど、あの家にいたい」
フジテレビ／2017年9月2日放送
【脚本】藤井清美／【原作】乃南アサ
ウツボカズラの夢・第４話 [ウツボカズラの夢]
「（母親からすれば）男の子はね、どうしたって把握しきれない部分があるって、あきらめられるけど、女の子のことは、なんでそうなっちゃうのって、自分と比べちゃって・・・」
フジテレビ／2017年8月26日放送
【脚本】藤井清美／【原作】乃南アサ
ウツボカズラの夢・第２話 [ウツボカズラの夢]
「たしかに、わたしは “なに” でもないよね。お金がないと、立場も買えない」
「いま “なに” でもないというのは、ただ（自分を）説明するのに不便だってことじゃなくて、５年後も なんでもないままかもしれないって、恐怖を感じることだ」
「思いつく夢の大きさと、持っているお金の多さは、きっと比例する」
フジテレビ／2017年8月12日放送
【脚本】藤井清美／【原作】乃南アサ
