だから殺せなかった・第3話 [だから殺せなかった]
「陽一郎とオレは(親子だけど)血はつながってない。他人だ。赤の他人だ。オレと かあさんも、血はつながってない。他人同士で結婚して、家族になった。そこに(オレたちの子として)おまえが来てくれた――。オレたち3人は平等に他人同士だけど、家族なんだよ」
「(オレは人混みで男を刺した――。)面白いのは、このあとだ。目の前でひとが倒れているのに、誰も助けようとしない。あのとき、誰もが知らんぷりを決め込んだ。自発的無関心だ。関わりを持てば責任が生じるから、見なかったことにしたのだ。ようやくホームレスが気づいた。これは、現場で起きた もうひとつの事件だ。なにもしない暴力。ジャーナリズムに、その深い罪が見えるか」
「ジャーナリズムとコマーシャリズム。本来、水と油の関係だ。一本木も、オレの立場(取締役)になったら わかる。報道機関も所詮は企業だ。(中略) 経営基盤がしっかりしてないと、社会正義も実現できない。オレたちの給料、誰が稼いでくれてるか、知ってるか? 広告や販売、デジタルに事業、収益部門の苦労は、編集出身者には わからん。オレもそうだった」
WOWOW/2022年1月23日放送
【脚本】前川洋一/【原作】一本木透
だから殺せなかった・第2話 [だから殺せなかった]
「(オレは男を刺して、屋上から突き落とした――。)あのとき、オレが驚いたのは、(落下現場に居合わせたやつらの)他人の死に対する反応だ。やつらには、死への悼みも、同情もない。面白がって撮影する者までいた。やつらにとっては、つぶれた顔も、そこらを染めた血も、臓物も、誰かに伝える衝撃映像にすぎないのだ。この光景の中に、殺人とは別種の罪や狂気は潜んでいないか?」
WOWOW/2022年1月16日放送
【脚本】前川洋一/【原作】一本木透
だから殺せなかった・第1話 [だから殺せなかった]
「ボクサーが世間の耳目を集めるためには、リングが必要だ。そこで強敵と戦ってこそ、レジェンドとなる。オレの場合、リングは太陽新聞だ。そして、オレの強敵となり得る挑戦相手に一本木記者を指名する」
「オレは人間をウイルスと定義する。それをさばき、増殖を防ぐワクチンがオレだ。一本木よ、オレの殺人を言葉で止めてみろ」
WOWOW/2022年1月9日放送
【脚本】前川洋一/【原作】一本木透