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ライジング若冲 ~天才 かく覚醒せり~ [単発]

「どうも、わたしの中には、風神さんと雷神さんが いてはるみたいでな。年中、カミナリ光らせて、激しい風を吹かさはる。その胸の内の嵐を、筆を使つこうて吐き出さんことには、苦しゅうて、苦しゅうて、かなわん。死んでしまうんやないかと、思うときもある――。これは、なんやろな・・・わたしの中にある煩悩やろか。願いみたいなモンやろか」



「技だけあって、心がない絵は、何千枚と見てきた。しかし、この絵の奥には、えがこうとしている正体不明のものがある。混沌として、まるで宇宙の正体のような・・・」



「相変わらず、自信満々やな」
「金がないさけな。自信ぐらいは、売るほど持っとかんと」



「無理やり探そうとすると、たいがい道に迷う」



「もう さんざん見尽くした――と思うたとき、神気しんきが見える。(中略) 躍動する魂の力みたいなもんや。もの言わん動物と人間が通じ合えると思うか。なんでやと思う? 鳥や虫、蛙や蛇には、表情がないからや。せやから、喜怒哀楽がないと、人間が勝手に思うてる。しかし、生きモンである以上、欲も、愛もある。それを外界に “気” として放っとる。それを感じることができたら、絵に命を与えられる」



「自分が美しいと思うものに たどり着く道は険しい。孤独で、ツラい。闇夜に提灯なしで歩くようなもんですわ。大典だいてんさんは、若冲じゃくちゅうさんの足元を煌々こうこうと照らしてくれる光や。わしも足元を照らしてくるひと、見つけます。それまで勝負は お預けや」



「たしかに わたしは一時いっとき、あんたの足元を照らす光やったのかもしれん。けど、いまは あんたのほうが、わたしの光なんや。ただし、足元を照らす光やない。わたしが歩く道の、ずっと先にある道しるべになる光や。それを目指して、暗い道を懸命に歩いていかな、あんたに置いていかれる・・・」



「こういう絵は、仏のためにこそかれるべきや。一切、妥協しない美しさいうのは、人間の手には余るものや。(中略) あんたの絵の腕は、もはや神の領域や。もう わしの教えることなどない。ただ感じ入るばかりや」


NHK/2021年1月2日放送
【脚本】
源孝志
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