「悲しかった思い出、教えて。心の中で おしゃべりするときは、楽しいことばかり話すのはルール違反なんだ」
「誰かに なにかを伝えたいときは、そのひとに抱きついてから話せばいいんだよ。抱きしめたら、きっと抱きしめ返してくれるから、あんなふうに。抱きつくのが恥ずかしかったら、手をつなぐだけでもいい。それが きみの本当に伝えたいことだったら伝わるよ。(中略) 抱きしめてくれるひとも、手をつなぎ返してくれるひとも、この世界に絶対にいるんだ。それを忘れないで」
「言葉はキャンディポットの中のキャンディに似ていると思う。欲しい言葉は確かに見えているのに、子供のころは、取り出しやすい別の言葉ばかり選んでいた」
「いつか、きみの話を聞かせてくれないか。うつむいて、ボソボソとした声で話せばいい。ひとの顔を真っ直ぐに見て話すなんて、死ぬほど難しいことだと、ぼくは知ってるから」
「きみが話したい相手の心の扉は、ときどき閉まっているかもしれない。でも、鍵はかかっていない。鍵をかけられた心なんて、どこにもない」
NHK/2021年3月20日放送
【脚本】いとう菜のは/【原作】重松清