幕末相棒伝

「もう武士の世は終わるきに。わしが大政奉還で日本を新しゅうする。なんでも話し合いで決めての。武士も、町人もない、誰にも へいこらせんでええ、楽しい国にするがじゃき。これからはの、町人でも、百姓でも、男でも、女でも、気張ったら ちゃんと報われる国になるがじゃき。見ちょってくれ」

---

「侍は、身分がどうのこうのと威張りくさっちゅう。同じ人間ゆうのに、それでええわけがない。メリケンじゃ、八百屋も、地主も、大統領も、同じ扱いじゃき」

---

「おまえは『民百姓でも、平等に、気ままに、生きられる国にしたい』と言うてたのう。アホか。逆に、民百姓が苦しむわい。政まつりごとをするモンが、しっかり しめつけんと、強いモンと弱いモンの差は、もっとひらくで。強いモンだけが生き残る。おまえは強いから、それに気がつかんだけや。（おまえは）剣も強い。頭も、口も、回る。そないに金に困ったこともない。恵まれとるやろ。おまえみたいなモンは ええが、弱いモンは なーんもできん。支配されるんが いちばんや。ええか、坂本。長いこと、太平の世の中が続いて、皆そろそろ戦いくさがしたいんや。おまえの言う『戦なき大政奉還』を鵜呑みにするやつは誰もおらん。皆、自分らの好きなように解釈してるだけや」

---

「新選組は誠の幕臣なり。この土方、なにがあろうと、最後まで幕府の盾となって戦いましょう。しかし、幕府はそれに応える覚悟は おありか」

---

「いま戦をはじめたら、日本はバラバラになるぜよ。けんど、お互い信じ合えたら、ひとつになれる」

---

「信じることは、戦より難しゅうごわすなあ」
「その分、得をすることも多いぜよ」

---

「二百年以上、徳川以外の侍は冷や飯を食ったのです。戦が起こらなければ はい上がれない」

---

「おまえ、坂本のようになりたかったんだろう。ムリだ、おまえは坂本には なれん。おまえが殺したのは、ただの男じゃない。おまえが斬ったのは・・・日本の明日あしただ」

---

NHK／2022年1月3日放送
【脚本】土橋章宏／【原作】五十嵐貴久