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恋愛のすゝめ・第4話 [恋愛のすゝめ]

「(華子さんがキスをしていたと)そう判断するのは まだ早い。なんらかの事情により、華子さんの心肺機能が一時停止していた おそれがある。そこで、彼がマウス トゥ マウスによる人工呼吸法を試みたのかもしれない。あるいは、ご飯の口移し。ペンギンなどの鳥類は、ひな鳥に対し、口移しで食事を与えるんだ。そもそも、オレが見たものが真実なのかが疑わしい。カリフォルニア大学の研究によれば、人間が見ている世界は、過去15秒までの視覚情報を脳が平均化したもので・・・。(中略) いや、事実じゃないかもしれない。オックスフォード大学教授ニック・ボストロムの主張によれば、われわれが生きる現実世界は、なんらかのシミュレートされた存在が・・・」



「おそらく(華子さんに彼氏がいるというのは)聞き間違いだ。ある音を発声している映像に別の音を当てると、第三の音が聞こえるという認知心理学の現象――マガーク効果による聞き間違いの可能性は否定できない。たとえば(『彼氏』ではなく)『カレッジ』。大学の話をしていたのかもしれない。あるいは『カレー シー』、カレーの海。たっぷりのカレーが食べたかったのかも。(はっきり『許嫁いいなずけ』と言った?) いいや、もしかしたら、昔ながらの漬物、いわゆる『田舎漬いなかづけ』の話をしていたのかもしれない。あるいは桜田門外の変で暗殺された江戸幕府の大老。つい、その名を口走ったのかも・・・。そうに違いない『井伊直弼いいなおすけ』だ」



「オレの恋は迷惑ではなかった。『誘ってくれて うれしい』と、『好きになってくれて、ありがとう』と、華子さんは微笑んでくれた。あの笑顔のためなら、オレはどんな苦しみも乗り越えられる。オレは華子さんが好きだ。(彼氏など)関係ない。(許嫁も)問題ない。八方塞がり、四面楚歌、本来なら あきらめるべき状況でも、微塵も揺らぐことのない華子さんへの思い。この超論理的な感情の飛躍こそが、恋愛の恋愛たる ゆえんなのだ。オレは必ずこの難問を解いてみせる」



「恋愛は失恋してからが勝負だったのか・・・」



「幸せのために(許嫁を)好きになる――。あなたは そうおっしゃいました。しかし、わたしは幸せになりたいから、あなたが好きなのではありません。ただただ、あなたのことが好きなだけで、充分に幸せなのです。(中略) 許してはもらえないでしょうか・・・わたしが あなたに恋をすることを。どんなに勝ち目がなくても、わたしは わたしの恋を あきらめることは したくないのです」


TBS/2023年12月12日深夜放送
【脚本】
中屋敷法仁宮本武史
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