昭和元禄落語心中・第6話 [昭和元禄落語心中]
「落語なんてもんは、独りじゃ、絶対できねえ。客がちゃんと欲しがってくれて、それに きっかり ちょうどの、多すぎない、少なすぎもない割をくれて、それに ちょうどよく見合う形の、飛び切り いい芸を返して、お互い気持ちよく取り引きをする。そんな落語をやるためには、客の姿がしっかり見えてねえと」
「ひとってのは、すべて わかり合えるわけもない。それでも、ひとは共に暮らす。取るに足らねえ、詮無いことを ただ分け合うことが好きな生き物なんだ。だから、ひとは独りに ならないんじゃないか」
NHK/2018年11月16日放送
【脚本】羽原大介/【原作】雲田はるこ
昭和元禄落語心中・第5話 [昭和元禄落語心中]
「八雲の名を継ぐ苦労は生半可じゃねえ。名跡の重みをしっかりと受け止めきれる度量がいるんだ。(中略) 到底、名前に勝てねえって思い・・・それが一生ついて回るんだ」
NHK/2018年11月9日放送
【脚本】羽原大介/【原作】雲田はるこ
昭和元禄落語心中・第4話 [昭和元禄落語心中]
「気持ちいいもんだぜ。金より、酒より、女より、満員の寄席で、しかもトリで拍手をもらうってのは、なにより最高に気持ちいい」
「男のひとって、そういうもんでしょ・・・大事なことは、なんにも教えてくれない。わたし、バカだから、そのほうがラクでいい。あんたみたいな優しいひとは苦手。つれないひとが好き」
「オレたちはな、やり方は違うかもしれねえけど、落語が好きで この道を選んだっていう根っこは、ずっと変わんねえぞ。戦争が終わって、なにもかも変わっちまった。なのに、落語は なにひとつ変わんねえんだよ。この人気に甘えて、むしろ変化を怖れてる。いまは いいよ。けど、長くひとの娯楽であり続けるには、これじゃダメなんだよ。オレはいま、とにかく客にウケる噺がしてえんだよ。そのためには、客にあわせて、いつもオレが変わんなくちゃ いけねえんだよ。変わんねえ落語も必要だよ、たしかに。それも、落語の本質だ。それは おまえさんの仕事なんだよ。ふたりで落語が生き延びていく道を作る。それだけは約束しようじゃねえか」
NHK/2018年11月2日放送
【脚本】羽原大介/【原作】雲田はるこ
昭和元禄落語心中・第3話 [昭和元禄落語心中]
「おまえの落語には隙がねえ。そうよ、色気ってのは、隙から生まれるんだ。いいかい、完璧なものに色気は射さねえ。隙があるくれえのほうが、愛嬌とか遊びがあっていいんだよ」
「死ぬのなんて怖くない。・・・独りで死ぬのは寂しいけど」
「仮に満州で師匠と みよ吉の あいだに なにか あったとしたって、あんときは あんときだ。この世じゃなかったんだ、あのときの満州は」
「男は『先に帰る』なんて言っちゃダメ。こういうときは『送ってってあげようか』って言うもんよ」
NHK/2018年10月26日放送
【脚本】羽原大介/【原作】雲田はるこ