だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ2・第8話「松の花」 [だれかに話したくなる山本周五郎]
「息を引き取った妻の、その手を取ったとき、わたしは驚いた。皮膚の硬さ、ひどく荒れた手の甲。あれは(大番頭の家で大事に育てられ、千石の家に嫁いだ者の手ではない。)水を使い、針を持ち、厨に働く者たちと同じ手であった。(普段 着ていたという)この粗末な着物は、わたしが知らなかった やすの真の姿を教えてくれた。やすは つましい生活をしながら、ずっと陰でこの家を支えてくれていたのだ。(中略) いま やっとわかった。真に誉れ高き女性が、いかなるものかということを」
「(藩史を)書き直すぞ。誉れ高き女性たちは、伝記に載せられた者たちだけではない。世間には もっと多くの、称えるべき婦人たちがいる。その婦人たちを忘れては、どんな記録も意味がない」
NHK BSプレミアム/2021年2月16日放送
【脚本】吉川久岳/【原作】山本周五郎
だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ2・第6話「ゆうれい貸屋」 [だれかに話したくなる山本周五郎]
「せいぜい働いたところで、どうせ抜けられねえ貧乏なら、あくせくするだけ損ってことさ。あの世へ行きゃ、また なんとか なんだろ」
NHK BSプレミアム/2021年2月22日放送
【脚本】大橋祥正/【原作】山本周五郎
だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ・第3話「晩秋」 [だれかに話したくなる山本周五郎]
「そうか、あれがクヌギか。木もよく見るし、クヌギという名も知っていながら、あの木がクヌギだということを、この年になるまで知らずに過ごしてきた。この年になるまで・・・。バカなことだ」
「自分は冷酷で、情けを知らぬ人間だと言われた。専制、暴戻と罵られたが、おかげで かえって仕事がしやすかった。そういう名がつけば つくだけ、無理が押せるし、責任をほかの者に分担させる必要もなかった。だが、もはや岡崎藩の基礎は確立した。領民にも、耐え忍んでもらったものを返すときがきた。新しい藩政がはじまるのだ」
NHK BSプレミアム/2021年2月22日放送
【脚本】吉川久岳/【原作】山本周五郎
だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ・第2話「泥棒と若殿」 [だれかに話したくなる山本周五郎]
「気の毒だが(オレの屋敷に)金はない。嘘だと思うなら、探してみればいい。もし見つかったら、オレにも少し分けてくれ」
「彼の体には、生きた世の中の匂いがついている。よいところも、醜いところも、卑しさも、清らかさも ひっくるめた、正直な、あるがままの人間の呼吸が感じられた」
NHK BSプレミアム/2021年2月19日放送
【脚本】吉川久岳/【原作】山本周五郎