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忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段・前編 [単発]

「歌舞伎の世界じゃ、忠臣蔵のことを “芝居の独参湯どくじんとう” と言うらしいね。忠臣蔵をやれば必ずあたる。つぶれかかった芝居小屋も生き返らせる妙薬に似たり――という意味だとか」



「オレが外を歩くとき、頭巾で顔を隠すのは、この顔が売りモンだからだ。舞台以外では、簡単に顔は さらさねえ。それが役者の慎みってもんだ」



「寄ってたかって、なぶり者にでもされたか。そういうときはな、なめられたら仕舞しめえだ。かなわねえまでも、一矢報いるぞって殺気を放て。自分を殴るやつから目を背けるな。相手の目を いちいちい ぐっと にらみつけてやる。そうされると、手を出しにくくなる。おまえの顔は決して忘れぬぞってな」



「オレはな、役者が大嫌れえなんだよ。オレたち武士をネタにして楽しんでる。とくに『仮名手本忠臣蔵』、あれなんざ、気に食わないね。おめえらが思うほど、武士は単純じゃねえ。忠義か、自分の命かと迫られたら、たいがいの武士は てめえの命を大事と思う。あたりめえの話だ。美談に仕立て上げて、オレたちの生き方、窮屈にしてんじゃねえ」


NHK BSプレミアム/2021年12月4日放送
【脚本】
源孝志/【原案】『月雪花寝物語』『手前味噌』
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