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踊り場にて(第33回フジテレビヤングシナリオ大賞) [単発]

「学校なんて、大人になったら なんの役にも立たない知識を必死に頭に詰め込んだり、意味もなくボールを追いかけたり、速く走ったり、友情をはぐくんだり、恋愛をしたり、失恋してみたり・・・そういうのを全部ひっくるめて、青春って呼んでキラキラさせて、大人を悲観させたりもする」



「佐藤って、日本でいちばん多い苗字なんです。名字でいう『佐藤』って、犬でいう『ポチ』です。ネコでいう『タマ』です。生まれた瞬間から、名前ハラスメントですよ」



「別れ話してみたいです。超あこがれです。うらやましいです。だって、別れ話って、つきあってるから できるんでしょう? うらやましすぎて、ハゲそうです」



「『いままでで、いちばん好きだったひとは?』って聞かれると、たいがいは実らなかった恋の相手が思い浮かぶんだって。さっき、テレビで言ってたの。おかあさんも、そうなのよ。高校のときの先輩――。卒業式で告白して、あっさりフラれちゃったけど、あきらめきれなくて同じ大学 受けて、結局、大学 不合格で、恋にも大学にも落ちたの。実らなかったから、好きに踏ん切りがつかないのよ。だから、いちばん好きな気がしちゃうの。ところがどっこい、実った相手はどう? (いまじゃ、家でゴロゴロしてる)。そう、あのゴロゴロは消しゴムなの。あたしの『好き』を消しちゃうの。すぐそばでゴロゴロされてたら、好きって気持ちに気づかなくもなるわよ。(実ったから、好きじゃなくなるんじゃなくて)消しゴムで消されちゃうってこと。でもね、大丈夫なの。消しゴムだから、ちゃんと消しカスが残るから。筆圧が強ければ、鉛筆の跡もちゃんと紙に残るから、なくなっちゃうわけじゃないの。見えづらくなるだけなの」



「他人から『あきらめろ』って言われて、あきらめられたら、そんなラクなことないよね。あきらめられないって思ってるうちは、あきらめなくていいよ。気持ちの行き場がなくなっちゃうもん」



「趣味って、なんだか知ってますか? 仕事にできなかった “好きなこと” です。好きなことが職業にならなければ、お金が稼げなければ、それは趣味です」



「『あきらめる』は『明らか』と同じ語源です。つまびらかにする、はっきりさせるって意味です。やめるとか、放棄するとか、そんな意味は、元々はありません。(中略) もう かなわないって、自分の実力が明らかになった。だから、やめる――。それが『あきらめる』です。なにもネガティブなことなんてないと思うんです」



「夢は必ずかなう? あきらめなければ、実現できる? ふふ、嘘です。残念だけど、嘘です、それ全部。夢は かなうこともあれば、かなわないこともあります。それでも、夢をあきらめたら、また次になにか・・・夢と呼べなくても、目標とか、抱負とか、そういうの決めて、無理やりでも、適当でも、意地でもいいから決めて、生きて行かなきゃいけない。ただ・・・ただね、夢を追ったことがある人間だけの特権っていうのがあってね。それは『夢を追いかけた』っていう事実です。挑戦したことだけは、ほめてあげられます。次になにか・・・新しい なにかをやろうと思ったとき、過去の自分がちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、優しく肩を抱いてくれます。背中を押すってほどじゃないです。そんな大それたことはしてくれないけど、でも、肩にポンって手を置いてくれます。それで生きて行けるってこともあるから・・・だから、大丈夫。みんな、夢が、これはもうムリだな、かなわないなあって、明らかになったときは、どんどん あきらめていこう。あきらめて、次に進んでいこう」


フジテレビ/2021年12月30日深夜放送
【脚本】
生方美久
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