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二つの祖国・後篇 [単発]

「井本さんは現在、急性骨髄性白血病の第2期です。原爆放射能によって、骨髄やリンパ節などが著しい損傷を受け、進行すれば、高熱で意識不明に陥る可能性があります。こういった患者が、(昭和)22年春から出はじめ、徐々に増えています。あなた方アメリカは、原爆がもたらす人体への影響など予想もしておらず、研究すらされなかったんでしょう」



「エミーはきっと純粋すぎるのよ。思い描いていた未来がこの戦争で大きく狂ってしまったことを、受け止められないでいるだけ。そんな自分に、おびえてるのよ」



「そうやって、怒りをぶつけることができる側はいいわ。けど、ケンはどうすればいいの。生涯 償いきれない罪を、背負って生きて行くしかないの? あなたの怒りはケンに対してではなく、もうひとつの祖国アメリカに向けてのものではないかしら」



「いま死を前にして、わたしの心を締めつけているのは、自分が生まれた国が落とした原爆によって、命を絶たれねばならないことです。幼いころから星条旗に忠誠を誓ってきた このわたしは、アメリカの敵だったのでしょうか。答えを得ぬまま消えていった日系二世がいたことを、合衆国は心に刻んでほしいのです」



「東京裁判は、勝者側からの復讐にすぎない」


テレビ東京/2019年3月24日放送
【脚本】
長谷川康夫/【原作】山崎豊子
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