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エール・第83話 [エール]

「ツラさは、いろいろあります。家族と離れた寂しさ。訓練についていけないときのミジメさ。集団生活に馴染めない孤独。わたしのせいで班員がしごかれてるときの不甲斐なさ。中でも、いちばんツラかったのが洗濯です。寒さで指先が切れ、痛くて痛くて・・・。それを母は、ぼくのためにずっとしてくれていた。予科練に入るまで、服がきれいなのは当たり前だと思っていた自分が情けなくて。親に報いるためにも、わたしは立派な飛行兵になり、皇国こうこく御為おんために戦います」



「うわさ話なんだけど、激戦地への慰問、裕一が候補に挙がってるらしい。頼まれたら、期待に応えようとしちまう性格だから、要請きたら行くんじゃねえかと思って。優しさって、ときに命取りになっから・・・」



「ここの初期の練習生が卒業するときに、わたしは『愛染あいぜんかつら』の『花も嵐も踏み越えて、行くが男の生きる道』――。あの一節を歌い、『若いおまえたちには、花のような まだ見果てぬ夢があるだろう。また、行く手には恐怖をそそる嵐もあるだろう。だが、それを勇敢に踏み越えて進むのが日本男児の道だ』と言葉を贈りました。その中に、爆弾小僧と あだ名された、田丸という暴れん坊がいたんです。勇猛果敢なやつでした。炎で燃え上がる飛行機を田丸は操縦し続け、敵艦に体当たりして、大きな戦果を上げました。きっと田丸は、あの歌を心に刻んで、立派に戦ったんです。先生、歌には ひとの心を奮い立たせる力があります。何百万人の心をひとつにする力があります。どうか、これからも命を賭して生きる若者のために、よろしく お願いします」


NHK/2020年10月7日放送
【脚本】
吉田照幸/【原案】林宏司
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