グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第７話（最終回） [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「確信した。これはネタやギャグなどではない。それどころか、（『バキ特別編SAGA』は）戦いの本質、愛の本質、セックスの本質、それらを真正面から描いた傑作であり、到達点であり、マンガ史に残る金字塔的作品なのだと。（中略） まずひとつ目、性行為について、双方の合意がしっかりと描かれていること。これは刃牙さんの人間的成熟を見ていく上でも大事なポイントです。かつての刃牙さんは、梢江さんとのコミュニケーションにおいて、少々 一方的なところがあった。描かれた時代感を差し引いても、あたしが どうも刃牙さんに一歩引いていたのは そのあたりです。しかし、梢江さんの人間離れした包容力と、自我の強さに触れていくうちに、刃牙さんの態度に変化が芽生え、結果、このように入念な（セックスへの）事前確認がなされている。これは勇次郎や花山さんの女性観とは一線を画しているし、また日本のポルノグラフィーによく見られる、『最初は強引ね』とか、『なんとなく雰囲気に流されて』とか、双方の合意をはっきり描かない慣用表現へのカウンターにもなっている。（中略） ふたつ目、ふたりの体が ほぼ等しい分量で描かれていること。セックスを描くなら当然でしょうが、実際は女性の体ばかりがクローズアップされることが実に多い。特に男性向けジャンルでは、男性の体が透明になったり、だんだんと顔が描かれなくなったりさえする。読者のニーズを考えると当然だとも言えますが、『SAGA』では ふたりの顔、ふたりの感想が、等しく描かれます。この手法によって、相手を思い合い、対等に影響し合う理想的なコミュニケーションとしてのセックスが描かれています。双方 描くという手法に着目するならば、BLのセックス表現に近いものだと言えます。三つ目、男性側の体の感じやすさ、繊細さも描かれていること。本編での刃牙さんの体は超人的な強度を誇っている。しかし、『SAGA』では、刃牙さんが やたらと感じやすい。特に乳首が弱い。なんなら梢江さんより大きな反応を示し、激しく うろたえる。これまたBLで言うところの、受けキャラに近いほどのものです。しかし、こうした弱さを笑うべきではない。弱さを認めること、他者からの刺激を受けて変化できること、これは すなわち強さへの可能性です。事実、このセックスという戦いを通じて、刃牙さんは変化し、格段にパワーアップするのです。愛――。闘争とセックスは表裏一体であり、殺し合いは愛し合うこと。これらの表現は決して言葉の綾ではなかった。『バキ』をBLとして読む行為は、決して こじつけではない。むしろ、互いの肉体や存在への飽くなき愛が、戦いを至高のものへと押し上げる――。刃牙さんのポテンシャルを解き放った梢江さんには、大いなる称賛を送りたい。刃牙さんを相手取った強靭なフィジカル、カーテンもない『刃牙死ね！ハウス』で事に及んだメンタル、その愛こそが刃牙さんを強くしたのです。笑いたいひとは、笑えばいい。ですが、わたしは ここに高らかに宣言します。『SAGA』は優れた肉体論であり、『グラップラー刃牙』は愛を描いたBLであると」
WOWOW／2021年10月1日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
※ 上記台詞には『描く』と書いて、『かく』と読む箇所と、『えがく』と読む箇所が混在しています。『かく』とルビが振ってあるところ以外は『えがく』と読んでください。
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第６話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「ドイルの行動原理がわからない。愛を求めつつも、ついつい裏腹な行動をとってしまう。ネコだ。完全に捨てネコだ。差し伸べられた手に、噛みつかずにはいられないのか」
「このツートンカラーのボールペン――。上下のパーツの組み合わせが自由に選べるんです。なぜ、これがBLアイテムかと申しますと、多くのマンガ作品では、キャラクターにテーマカラーがあるため、キャラ同士のカップリングを２色の組み合わせで表すことができます。（中略） 推しカップルの概念を常に携帯できるんです。特に『バキ』などの女性読者が少ない作品は、女子向けの商品が出ることが皆無なので、グッズの欲しい女子は、キャラの象徴となるものを買って代用するんです。そこで、このツートンカラーペン。いろんな作品に汎用性があり、自分の心のカプを いつも そばに おいておける。カプというのはですね、カップルのことです」
WOWOW／2021年9月24日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第５話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「あいつも本気なんだから、おまえも本気で応えてやれよ・・・『バキ』読んでるんだったらな。『バキ』って、そういうマンガじゃん。魂でぶつかり合うマンガじゃん」
WOWOW／2021年9月17日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第４話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「ノーコメントって、コメントだから。あれって、ほぼ『イエス』ってことだから」
「第一試合は刃牙さんVS烈さん。刃牙さんは なぜか血まみれで登場。意外性があっていいシーンのはずだが、わたしには『すごいよ!!マサルさん』のワンシーンに見えてしまった。そして、烈さんによるシルクロードの解説。この いかがわしい うんちくも『魁!!男塾』の民明書房にそっくりだ。さらに、烈さんが靴を脱いでパワーアップ。これは『ドラゴンボール』のピッコロさんが、戦いの前に おもりを落とす行為と似てい・・・！ 『刃牙』を読んでいたはずが、いつの間にか『ジャンプ』を？ ひとは初めてハマったマンガ雑誌を親だと思い込む。ジャンプコミックスを さかのぼった青春が、いまフラッシュバックする。わたしの中で思った以上に、それは人格形成をなしていたらしい。恐るべし、わたしの中のジャンプの血。刃牙さんが見せたリアルシャドーは、なんか妙に恥ずかしく、家でやれ、と思ったが、その後、烈さんの攻撃によって、範馬の血が覚醒。烈さんに えげつない勝利をおさめる。たぎる範馬の血。そして、ジャンプの血」
WOWOW／2021年9月10日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第３話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「『男子はね、誰でも一生のうち一回は地上最強ってのを夢見る』（っていう刃牙さんの台詞）。これも苦手・・・。この一般化する感じ・・・苦手」
「（刃牙さんは彼女を）川べりへ連れ出し、自身の過酷な人生を一気呵成に語りはじめる。17才の女子高生が受け止められる物量じゃない。たった数時間でこれだけのことを見聞きさせられて、倒れなかった彼女こそを称えるべきだろう。包容力最大トーナメントがあれば、間違いなく優勝だ。だいたい刃牙さんは、すべてをわかってもらおうなんて、ムシがよすぎる。自分中心の体育会系ならではの発想だ。もっと、ひとは理解し合えないことを、キモに銘じるべきだ」
WOWOW／2021年9月3日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第２話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「こちらが、ご存知（竹宮惠子著）『風と木の詩』です。主人公のひとり、ジルベールは類まれな美少年です。しかし、不義の子のため、母に見放され、父親からは あらゆる虐待を受けます。愛に飢えたジルベールは、全寮制の男子校で まわりの少年たちを誘惑する。これがジルベールです。BL界隈では、悪魔的美少年の代名詞となっています。気づきませんか。彼です、刃牙さんです。似てませんか、刃牙さんとジルベール。どうやら刃牙さんも幼いころ、地上最強の父親と、大金持ちの母親から、激しいトレーニングを強制されたようです。それゆえに強くなり、愛に飢えた。ジルベールと同じ境遇ですよね。加えて、刃牙さんの体には無数の傷。これもジルベールと同じ。むしろ、わたしたちの界隈では、『体に傷』と言えば、40年前からジルベールなんです。つまり、刃牙さんはジルベールの再来。むしろ、ジルベールが地下闘技場に出ていた説まである。と考えると、出会い頭にパンチしてくる男にキスをする理由も理解できますよね。まさに刃牙さんは、生まれ持ってのBLの子――ナチュラルボーン ボーイズキラー」
WOWOW／2021年8月27日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ・第１話 [グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた]
「わたしは ここ１週間、『グラップラー刃牙』に夢中でして・・・。誰が いちばん強いか、あるいは どの技が面白いか――なんてことは、まあ どうでもよくて、男同士のエロい場面を想像しています。さらに、刃牙さんたちのラブ、つまりBLがどのようにして育まれたのかを捏造、もとい空想する。こういったことを、少なく見積もって、一日30時間くらい考えている。（中略） 長期にわたる大河格闘マンガの、最初のたった３巻を読んだだけで、わたしの脳内からは炭酸の抜かれたコーラや、タッパいっぱいの おじや、そういった濃厚な汁が、こみ上げて止まらないのだ」
「ほかのメンツが刃牙さんを狙うの。みんな、刃牙さんと一対一になりたがって、ライバル同士、バチバチやりはじめんの。刃牙さんがいなくなっても、まだやってんの。のっけから愛情のベクトルがすごくて・・・。いまどきBLマンガだって、こんなに男が男のこと考えたりしないよ。全員が全員、望む男とやり合うことしか頭にないの」
「シリーズ全巻 130冊以上。最初の３巻（を読んだ）だけで、脳内からはアツアツの おじや があふれ出んばかりだったのに・・・130冊といえば、おじや換算でいうと、特大タッパ40杯以上となる。これは明らかに致死量。しかし、わたしは もう刃牙なしではいられない体。刃牙さんが、刃牙さんを取り巻く男たちが、誰と どんなふうに結ばれるのか、それを考えずに生きて行くことは もはやできない。出会ってしまった以上、飲むしかないのだ・・・特大タッパ40杯以上の おじやを」
WOWOW／2021年8月20日放送
【脚本】上田誠／【原案】金田淳子
