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顔だけ先生・第3話 [顔だけ先生]

「食事をただの生命維持活動のための道具にしちゃったらね、体は維持できても、心がやつれてくよ。(中略) なんとかしないとね、そのうちに恋をするのも面倒くさくなるよ。そして、人生の楽しみを次々に放棄していって、いつしか何事にも心が動かないロボットのようになっちゃうよ」



「ユーチューバーも大変でしょう。毎日、動画をあげて、再生回数と にらめっこ。自分で面白いと思ったものが、世間の面白いものと合致するわけではなく、いつしか自分のやりたいことも見えなくなって、世間のニーズという、得体の知れないものの奴隷になっていく。あれもやった、これもやった・・・。マンネリとの戦争で傷ついた自分を いやしてあげる時間もない。いやはや、お疲れさまです」



「学生のころ、もてはやされたアイテムが、大人になると効力を失うなんてことは、まあ、あることですから。たとえば、足が速い なんていうのは、学生時代にのみ輝きを放つ要素ですし、もっと言えば、ルックスだって それほど重要な要素には なり得ません。悲しいかな、お金があれば なんとか なるんですから」



「まだ わからないかもしれませんが、たとえば このフルーツ。みなさんにとって、これは冷蔵庫を開ければ、当たり前に入っているものだと思ってるかもしれませんが・・・独り暮らしの人間がスーパーに行って、まず素通りせざるを得ないもの、それがフルーツなんです。だって、フルーツって高いから。贅沢品だから。それを踏まえた上で、現時点で黙ってテーブルにつけば ご飯が出てくる あなたたちと、自分でご飯を作らなければいけない市川くんが わかり合えないのは、仕方のないことなんじゃないかと思いますけどね」



「振り返れば、かわいい女子がいる。手を伸ばせば、友達になれるかもしれないひとに さわれる。教室のあちこちから面白い話が沸き立っていて、みんなで矛先を向けるべき憎たらしい大人がいる。こうなるまで気づかなかったけど、こんな恵まれた環境、いましかないですよね。(中略) みんなは意味のない場所にいられる幸福に感謝すべきだと思う。だって、生きようと思わなくても生きられる――。そんなのは学生時代だけじゃない? 退屈な授業、理不尽な押さえつけ、10年後には忘れているであろう友達との会話、それに愚痴を言っていればいいだけの時間なんて、最高に幸せだよ。ぼくは一足お先に ここからサヨナラしますけど、みんなには ずっと学生でいて欲しいよ」



「生きていくということは、惰性に身を任せて、労働するというレールに乗らなければ できないことですよね。ぼくには それがないから、だらだらと同じ場所を行ったり来たりすることもできない。目的地がないから、ここにいるしかない」


フジテレビ/2021年10月23日放送
【脚本】
櫻井智也
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