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仮想儀礼・第10話(最終回) [仮想儀礼]

「簡単に法を否定すんな。法は尊いものなんだよ。人間が血と汗を流して英知を結集させて作り上げた、人類の歴史そのものなんだよ。なにが大宇宙の法だ」



秋瞑しゅうめいは いま、自分を神だと思ってる。雅子は その愚かな信者で、麻子あさこは ふたりに気に入れらようと必死だ。人間なんて所詮この程度の存在なんだよ」



「教団をはじめたころ、いろんな嘘を考えたよ。嘘っぱちの教義、嘘っぱちのご本尊、嘘っぱちの祭り・・・。でも いま、どうして弔いの儀礼を考えなかったんだって、後悔してる。由宇太ゆうたがひとを殺めたとき、オレはその場に訪れもせず、小銭稼ぎに うつつを抜かしていた」


NHK BS/2024年2月11日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第9話 [仮想儀礼]

「病気でも、詐病でも、あるいは本当に霊能力があったとしても、彼女は救われたくて、ここに来た・・・。救ってあげたい」


NHK BS/2024年2月4日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第8話 [仮想儀礼]

「ひとには、自分で考えて決めなきゃいけないことがありますよね。なのに、わたしは全部 回向法儒えこうほうじゅに丸投げしてました。全部の答えを回向が持っていて、わたしは それを信じてさえいればよかった。だから、回向が偉そうにしてれば、わたしも自信満々でいられたし、仕事だって順調で、家族も円満だと思ってました。けど・・・けど実際は、家族は わたしに無関心で、いつの間にか わたしは ひとりじゃ なにも決められない人間になってました。回向なしでは生きていけなくなってました。だから、あそこを辞めてからずっと不安でした。信仰って怖いですね」



「都庁ってのはな、ヤクザも、右翼も、活動家も押しかけてくんだよ。オレはそういうところで十数年間、仕事してきたんだ。元役人をなめんじゃない」



「神が人類を作ったんじゃない。人類が神を作ったんだ。なぜか? 必要だったから」


NHK BS/2024年1月28日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第7話 [仮想儀礼]

「霊視のできる女性がいるって言ってましたよね。大事にするといいよ。霊媒師は使いようによっちゃ、教団を何倍にも大きくしてくれますからね。(中略) わが国では、はるか古代から神がかりの女性が多くの人々を導いてきたじゃない? あれはね、おっかさんでもあるんだよ。子にとって、母親は生まれたあとでも、ずっと子宮――みやだ。だから、ひとは神がかりの女性に一種の原始的な信用を置くんだな」



「日本には、法人登録されたものだけで18万の教団がある。教祖と名乗る者は、一説には65万人とも言われている。小規模とはいえ、優れた教祖がいるところは実績を上げていくものだよ」



「宗教の本質は苛烈だよ。中途半端な教祖は、信者に食われる。信者に食われる前に、こちらが食ってしまうことだ。食われる信者はそれで幸せなのだ。満足して食われていく」



「宗教者にだって選挙権はあるんだし、支持政党を応援するのは当たり前の話でさ。そうじゃなくて、オレがイヤなのは、政治家が票集めのために宗教団体を利用し、宗教団体はその教団の信用性を高めるために政治家を利用するって図式だよ」



「苦境こそ、天の恵みです。自分を成長させてくれる。それに、苦しみを多く 味わえば 味わうほど、ひとの痛みに敏感になることができる。より多く、より大きく、苦しみなさい」



「どんな教団も信者は真面目だからな。上から『支持政党の選挙活動への奉仕は、功徳になる』と言われれば、熱心に取り組む。信仰心を票集めに利用されたんだよ」


NHK BS/2024年1月21日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第6話 [仮想儀礼]

「夢を追うのはいいけど、ちゃんとした夢を持って」



「『金が欲しい』『儲けたい』でやってきたけど、いざ金 持ってみると、なにに使っていいか わかんない。儲けたいひとって、なんで むなしくなんねえんだろうな」


NHK BS/2024年1月14日放送
【脚本】
港岳彦江頭美智留/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第5話 [仮想儀礼]

「あなたは これから(教祖として)いわゆる富裕層の前に出るんでしょ? そのとき、その貧相な身なりで、彼らが あなたを仲間だと認めると お思いですか。彼らは、口では いくら きれいごとを言っても、その絶対的な ものさしは金だ。量販店のシャツを着た男に、びた一文 課金しません」



「彼が なぜ会社の施設を教団に貸し出すと思ってんですか。『モリミツ』の社長が こんな粗末な集会所に通ってたら、世間体が悪いからでしょうが。あなたたちが これから乗り出すのは、欲にまみれた人間たちの大海原だ。太った獲物を、大いに釣り上げてくださいよ」



「大衆は泣きたいんだよ。ビジネス書しか読まないようなオヤジこそ、心の芯の部分では泣きたいのよ。だから、心にしみる、泣かせる説法を一発かますのよ」



「宗教だけが資本主義経済から逃れられるとでも思ったの? 服を作ろう。階級によって色を分けるんだ。着てる衣で階級が はっきり分かれると、信者たちは競って献金をしてくれる」


NHK BS/2024年1月7日放送
【脚本】
港岳彦江頭美智留/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第3話 [仮想儀礼]

「あのひとたちは いま 張りぼて ご本尊を拝み、悩みの解決に お金を払っている。(中略) 教義だの、儀式だの、ぶっちゃけ なんでもいい。たまたま いい話になったから、ちょっと宗教っぽい気分になってるだけ。要は、彼女らが求めてるのは現世利益げんぜりやくだよな。病気を治せとか、家庭の不和を解消しろとか、居場所が欲しいとか、もう悲しいぐらい典型的。だから、教義も小難しい用語なしで、暮らしにフィードバックできるもの(を用意したほう)がいいだろう」



「インチキ宗教って、やたら簡単に ひとが救われるんですよね」



「(お布施の額に こだわらないのは、教団を)始めたばっかだからでしょ。サブスクだってそうじゃない? 最初は定額980円で入会を募って、やめられなくなったら一気に値上げするの」



「信者か・・・重いな。誰かがオレのこと全力で信じるんだぞ。怖くないか。(中略) 極端な話、オレが命令したら、毒ガスだって まくかもしんない・・・オレのこと 信じちゃってるから。(核兵器を手に入れたような気分?)逆だよ。まるで生まれたての赤ん坊を手にしたみたいだ」



「おまえは子供だから本当のことを話しておく。宗教をやってるとこのトップなんてのは、一見 穏やかな顔をしていても、分厚い面の皮を一枚ひんむいてみりゃ、ヤクザみたいなやつは いくらでもいる。用心しろ」



「親と警察に相談して、(クラスメイトに)金を奪われたことと、暴行を受けたことを、洗いざらい話せ。おまえはイジメられてるんじゃない。暴行と恐喝という犯罪の標的にされたんだ」



恵法三倫会えほうさんりんかいは信仰に競争原理を持ち込んでるんですよ。回向法儒えこうほうじゅは経営学部中退でしょ。学生仲間と立ち上げたベンチャーが詐欺で摘発されて、そこから宗教ビジネスに入ってきた。信者同士(を献金額で)競わせたり、富裕層の学生ばかり狙って入信させるやり口――。はたから見てたら、かなり露骨ですけどね」



「あなたは今日、なにひとつ罪を犯しませんでしたか。世間的に見て、立派だとされる仕事があって、そうした仕事をしてるひとたちの社会的地位は高い。しかし、彼らは罪を犯していませんか。経営合理化を理由に、何百人もの人々の首を切る最高責任者もいれば、大きな工場でミサイルの電子部品を作る方々もいる。彼らは罪を犯していませんか? わたしたちは生きてること自体が罪なんですよ。そうした中で、生きるために酒をつぐことを生業とした女性たちを差別し、排除することが本当に人の道に照らして正しいと思いますか」



「きみと きみの兄さんの関係は、兄からの性的虐待だったと思う。きみは悪くない。キレていい。怒っていい。いや、怒れ。きみには怒る権利しかない。いつの間にか そうなったとか、自分も楽しんだとか、そういうのはフェアじゃない。なぜなら、兄は兄だから。きみは被害者だ」



「ひとを裁きたいのなら、別の場所に行きなさい。ここは共に祈るところです」



麻子あさこさんのしてることって、結局は無病息災、商売繁盛を願ってるだけですよね。現世利益のために信仰を利用してるってだけです。そこに、本当に苦しんでるひとたちへの配慮や、思いやりってないんですか? 信心すれば得をするって考え方、あたしは信仰だと思いません」


NHK BS/2023年12月17日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
※ 1段目は2名による連続した台詞をつなげたものです
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仮想儀礼・第2話 [仮想儀礼]

「人間、『わたしたち』って言われると、すぐ『わたしたち』側になろうとするもんね」



「いるんだよ。社会のシステムや制度について、正確な知識を持っていないひと。個人じゃ、問題の解決もできないし、相談相手もいない。家族に話しても『愚痴っぽいひとだ』と聞き流されたりしてさ」



「祈りの時間を設けることで、生活習慣が整い、体調がよくなって、ひとに優しくできる余裕が生まれた。優しくされた家族は、彼女に優しくし返した――。それが信心の正体なんですよ、広江さん」



「(恵法三倫会えほうさんりんかいは政財界への)膨大な額の寄付金を資源に、名誉と信頼を買い取ってるっていいますね。まあ、教団の広告費としては、安上がりなんで」



「こいつらが野放しなのは、結局、宗教右派だからだよ。家父長制の権化のロビイストね。男は男らしく、女は女らしく子供を産んで共同体に奉仕しろ。間違っても、個人の幸福の追求なんか すんなって考え方が、保守政党の手厚い庇護を生んでる仕組みなのよ」


NHK BS/2023年12月10日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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仮想儀礼・第1話 [仮想儀礼]

「(オレのゲームシナリオは)設定ばかりで、物語がないってさ。資料をまとめるのは上手だが、イマジネーションが決定的に不足してるって。それから、出てくるキャラクターが皆 古くさくて、昭和かと思ったって。(中略) 薄笑いで言われたよ。頭のいいひとが頑張って書いたねって」



「たまたま耳に入った言葉を、神の声と勘違いして、道を踏み外すやつっているよな。オレも、おまえというクズの声に勘違いして破滅したんだよ」



「宗教 作ろう、食ってくために。(中略) 会社 作るより簡単じゃん。だって、資本金ゼロよ。宗教団体は宗教法人法 第2条の定義によると、宗教の協議を広め、儀式・行事を行い、及び信者を教化・育成することを主な目的とする礼拝の施設を備える団体をいいます。宗教法人になれば、ほかの法人と比べ、税金などが優遇されます、と。つまり、教義、儀式、礼拝施設――この3つがあれば、宗教団体としての要件を満たせる」



「科学が人間を救った? AIに仕事 奪われるとか、フェイクニュースとか、ドローンで戦争だとか、いまこそ不安でいっぱいじゃん。ね、だからこそ、ひとは宗教に惹かれるの」



「(宗教とカルトの)線引きは、そんなに簡単なものじゃないんだよ。ビジネスには、熱狂的な顧客を作り出すカルト ブランディングって方法論もあるくらい、カルト的なものはオレたちの社会にゴロゴロとしてる。宗教とカルト、ビジネスとカルト、なんなら国家とカルトだって、線引きは困難だ」



「オレが言おうとしてるのは超シンプル。信者30人いれば、食っていける。300人いれば、タワマンに住める」



「(投資セミナーだって、宗教と似たようなものだ。)ちょちょっと消費者の不安を煽り、金を出させる。言葉でつなぎ止め、会費やら、講演料やら、手数料やらを せしめ続ける、と」



「世界の複雑さに耐えられない者が、単純な物語に すがるんだよ。さらに、被害者ポジションまでゲットすれば、一生 楽しめる。信者が増えれば(儲かる)・・・配信とか、本とかで。なんなら政党 作ったっていい。書いてみる? 『ついに判明、世界の仕組み』――。見てみなよ、(ポスト トゥルースを声高に叫んでる)みなさんね、実に生き甲斐のある顔をしてらっしゃる」



「これはサービス業だから。宗教の名のもとに精神の安定を売るサービス業。オレたちは その対価を、お布施という形でいただく」


NHK BS/2023年12月3日放送
【脚本】
港岳彦/【原作】篠田節子
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