パンドラの果実 ~科学犯罪捜査ファイル~・第6話 [パンドラの果実]
「金縛りは睡眠麻痺といって、睡眠障害の類いです。睡眠には、浅くて夢を見るレム睡眠と、深くて夢を見ないノンレム睡眠があるのは、ご存じですか。レム睡眠中に脳だけが目覚めてしまったときに起こる現象――それが金縛りです。体は眠っているのに、脳だけが覚醒している。だから、体を動かすことができないんです。レム睡眠中は呼吸や心拍数が乱れることが多く、胸を圧迫される感覚を覚えます。そこで脳が勝手に理由を考え、上にひとが乗っかっているという幻覚を生み出すんです」
「なんか似てんのよ、小学校のとき 嫌いだった男子と。お調子者で、嘘つきで、笑いながら まわりを陥れるタイプ」
「この旧館、木造でしょ? 木は湿気を、吸ったり、吐いたりすることで伸縮する。これは、そのときに鳴る音。(霊現象じゃない。)いわゆる、家鳴りよ。(背筋がゾクゾクってした?) ビビったときに、寒気を感じるのは当然だよ。逃げようという生存本能が働いて、体がすぐに動けるように、心臓や脚の大きな筋肉に血液が送られるの。そのせいで末端血管が収縮し、肌体温が低下して・・・」
日本テレビ/2022年5月28日放送
【脚本】土城温美、福田哲平/【原作】中村啓
京都人の密かな愉しみ Blue 修業中「門出の桜」 [単発]
「越える壁は、高いほどええ」
「京懐石は交響曲に似てるんやて。それが うちの初代の口癖やったらしいわ。ベートーベンの第九は最後の『歓喜の歌』だけ聴いたらええ いうもんやない。第一楽章から順々に聴いてこそ、聴き終わったときに ほんまもんの感動が得られる――。京懐石も おんなじ」
「日常的に登り窯を使う京焼の窯は、いまはもう ほとんどない。デカすぎて場所を取る。大量に薪を使うから、高うつくし、煙が近所迷惑。火力調節が難しいから、出来上がりが不安定。まる二日 寝んと火の番せなアカンし、めちゃくちゃキツイ。にもかかわらず、登り窯で焼いてみたい言うアホが、あとを絶たん。わしも そのアホのひとりや。あの なんとも言えん灰の景色、釉の窯変・・・そんな器が、千にひとつでも焼けたのを見てしもうたら最後、虜になる。登り窯の神さんは、全身全霊で向き合うやつにしか微笑まん」
「ぼくと釉子ちゃんの、いちばんの違いは なんやと思う? ビジョンがあるか、ないかの違いや。釉子ちゃんの頭の中には、作りたいものが、こう、はっきりとした輪郭で、次から次に浮かんでくるやろ? そういうのは、一握りのアーティストしか持ってへん特別な感覚やねん。修行して身につくモンやない。釉子ちゃんが弟子入りしたときから、そう思うてた。ま、嫉妬やね。羊山先生には、それがわかってた。ほかの弟子より厳しく接したのは、きみにしか わからへん頭の中のイメージを、具体的に実現する技術を身につけさせるためや」
「『潮時』いう言葉がある。(中略) 船出するのに、いちばんええタイミング いう意味や。弟子の船出の潮時を計るんは、師匠の最後の仕事や。情に引かれれば、潮時を誤る」
「庭のことしか わからんようでは、一流の庭師とは言えん。建築、美術、茶道、陶芸――。外国の造園技術を知ることもええ。どれも、外に出んと わからんことばかりや。外に出て、自分のやるべきことを見つけなさい。その上で、京都の庭師が自分の天職や思うたら、戻ってこい。わしは それまで死なんで待っといたる」
NHK BSプレミアム/2022年5月28日放送
【脚本】源孝志
歯無しのグルメ ~噛まずにとろける美味い店~ [単発]
「もつ焼き屋に来て、もつを食わずしてどうする? オレはマンガ喫茶に入って、ドリンクバーだけで帰るか? カラオケに入って、DAMチャンネルだけ観て帰るのか? そんな もったいないこと、するわけないだろ」
「なんて無抵抗な もつなんだ。心地よい歯ごたえを残したまま、いやな反発もなく、すべてを悟ったかのように口の中で溶けていく。胃袋までのゴールタイム、約3秒。もつ史上、最速タイムじゃないか」
「アゴをわずかに動かすだけで、脂のうまみが口全体に広がっていく――。(中略) 歯なんて必要ない。必要なのは食欲だたひとつ」
「(この大福は)噛まずとも、むにゅんと言いながら溶けて消える。『食べる』じゃない、『飲める』だ。まるで水。大福に擬態した水だ」
「でた、歯無しの味方、低温(調理)――。(中略) この方法を編み出した発明者は、ちゃんと『ノーベル歯無し賞』を受賞したんだろうか」
「うまい肉を噛まずに飲み込める喜びを(オレは)噛みしめている」
TBS/2022年5月28日放送
【脚本】細川拓朗、高柳浩平