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おいしい給食・第7話 [おいしい給食]

「給食焼きそばにキャベツが多いのには、わけがある。焼きそばの歴史は2700年ほど前の中国と言われているが、この日本のソース焼きそばの歴史は浅く、終戦後あたりからだと言われている。当時の日本は食べ物が乏しく、麺の原料となる小麦は手に入れにくかった。それで、キャベツで かさ増ししたのがはじまりだ。だが、キャベツで かさ増ししたがゆえ、キャベツの水分で味が薄くなってしまったのだ。そこで、ソースで味を調えたのだ。回転釜を使った加熱方法によって、さらにいくつかの独自性が生じる。何10キロという焼きそばを力任せに かき回すので、麺が重みで切れてしまい、一本一本が短くなる。しかし、それが結果的に、大量の長い麺が一気に口に入ることなく、食べやすさを演出している。そう、麺にコシはなく、野菜もベッチョベチョ、肉は硬い――。なのに、うまい。ナポリタンスパデティやカレーライスのように、日本人はオリジナルから独自に発展させるのが天才的。まさに日本が誇るべき創作料理だ」



「目の前にコッペパンと焼きそばがあって、焼きそばパンにしない人間は、ただ意固地になってるだけの頑固者だ。(中略) そして、ワカメスープ。メカニズムはわからない。どんなケミストリーを経て、この相性が生まれたのか。ソースのしょっぱさをパンで薄めつつ、水分を取られた口の中をスープで潤す。スープの中のワカメ、野菜、そしてゴマ。こいつらが焼きそばパンにさらなる彩りを与える。口の中で一体なにが起きているんだ。この料理をどう呼べばいいんだ。いや、そう、答えは決まってる。そう、それが給食だ」



「焼きそばとパンで、焼きそばパンを作ることで、見栄えがさびしくなる。それを加味してのことか、今日はデザートにバナナがある。もちろん、栄養価も鑑みてのことだろうが、焼きそばとバナナ、すごい組み合わせだ。さすがに いっぺんに口に入れることはないが、脳内で素早いシフトチェンジが不可欠だ。一見、カオスな様相を見せながら、その奥底には秩序のようなものが垣間見える。カオスとは、ただの乱雑な混沌ではない。その中に秩序は確かに内包されているのだ。給食はそれをわたしに教えてくれる」


TOKYO MX/2019年11月25日放送
【脚本】
永森裕二田口桂
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