大岡越前スペシャル [大岡越前]
「余が見ている花と、そちが見ている花は同じ花だが、花は見る向きで違うて見える。下々の者は吉良 憎しで、内匠頭の仇を討った赤穂の者どもを ほめそやす。だが、吉良上野も内匠頭 同様、己が所領では名君と慕われておったという。赤穂に義士あらば、吉良にもまた・・・そうは思わぬか」
「ひとは なにゆえ 生まれてくるのか――。もしかすると、ひとは あることに一命を賭すために生まれてくるのかもしれん。(中略) 直助もまた悪党ではあったが、おつやという娘を生かすために・・・ただ それだけのために 生まれてきたのかもしれん」
NHK BS/2023年12月29日放送
【脚本】尾西兼一
大岡越前6・第8話(最終回) [大岡越前]
「(国禁により蘭方医が)オランダの洋書はおろか、清国で訳された書物すら満足に読めない。そのせいで、熱冷まし ひとつとっても、遅れをとっている。こんな有様では、日本は取り残されます。(それを指摘する)こんな意見書ひとつで つむじを曲げる お上など、無能と断じて差し支えない」
「時の流れを見定められぬ お方は、将軍の器にあらず」
NHK BSプレミアム/2022年7月1日放送
【脚本】尾西兼一
大岡越前6・第6話 [大岡越前]
「金への尽きねえ欲は、重い病のようなもんか・・・。強欲が過ぎると、心が病み、やがて体にも その影が及ぶ。欲を抑えて、心を整えることこそ、養生の肝心な第一歩だ」
「己のことしか考えられぬ、金ばかり追う、欲まみれ世か。それはもう、ひとの世とは言えんな」
「おまえが殺したのは、金兵衛の心に巣食う餓鬼だ。鬼退治、ご苦労であった」
NHK BSプレミアム/2022年6月17日放送
【脚本】朝比奈文邃
※ 1段目は3名による連続した台詞をつなげたものです
大岡越前6・第1話 [大岡越前]
「ひととは愛おしいものよのう。ふたむかしも前に逃げた女の暮らしぶりを見て、盗んだとはいえ、素知らぬ顔で小判を与える男がいるかと思えば、その男が盗んだ小判であろうと知りながら女は口をつぐみ、そんなふたりの別れを作った己のありようを懺悔して死ぬ男もいる。ひととは愛おしい。恩讐を乗り越え、相手を労わることができる」
NHK BSプレミアム/2022年5月13日放送
【脚本】尾西兼一
大岡越前スペシャル [大岡越前]
「東西180軒、南北130軒、5つの町からなるこの吉原にいる遊女は3000人だ。みな それぞれ美しさを競い合い、手練手管で客をたらし込み、一晩で1000両もの金を落とさせる――。客を本気にさせるためなら、『主様、命』『次に来るのは、いつでありんす』とばかりに、相手の名前を腕に彫り、髪を切り、小指を落とし、爪を剥いで送ったりするもんさ。(それで男はイチコロだが)そもそも髪は別の女のものだし、小指の爪も しんこ細工の作り物。彫り物すら、別れちまえば もぐさで焼いて消しちまうんだから、お笑い草よ。『女郎の誠と、卵の四角、あれば晦日に月が出る』ってな」
「(お奉行様の)言われる通り、ここは苦界。なれど、世間のほうが、よほど苦界。それは、毎日 お裁きをなさる お奉行様のほうが、ご存知のはずでは ありんせんかえ」
「『不甲斐なき己を始末する』と、あの男は言ったのだ・・・。(中略) ひととして生きるとき、誰しもそんな思いに駆られるときがある。不甲斐なき己に地団太 踏み、忸怩たる思いで酒をくらい、そんな己に折り合いをつけて、ひとは生きていく――」
NHK BSプレミアム/2020年1月1日放送
【脚本】尾西兼一
大岡越前5・第7話(最終回) [大岡越前]
「一口に罪といっても、犯す者の心根はひとそれぞれ。許されざる罪もあれば、心を入れ替え、もう一度 やり直すよう背中を押してやるべき罪もある。それぞれ見合うようにと思うものの、御定法に染まぬ裁きをするわけにもゆかぬ」
「御定法というのは、いつ、誰が作ったのですか。御定法が父上のお裁きに合わないのなら、そっちを変えれば よいのではありませんか。だって、神様や仏様が決めたことではないのでしょう」
「いまある その者の真の姿を、奉行がしかと見極めねば・・・。罪を憎んで、ひとを憎まず。許されることで立ち直り、そののちの生きる望みを得る者もありましょう。伊生殿は忠実に法度にしたがっておられる。しかし、その一方で、疑わしきに過ぎぬ者を罪人と断じたり、また許されてしかるべき者を裁き、内心、忸怩たる思いを抱かれたことはござらぬか。いまの法度に沿う限り、奉行は常にその危うさを飲み込んで白洲に向かわねばならぬ。果たして、本当にそれでよいものかどうか」
「法度改め、結構なことではないか。定法なくして、民を律することはできぬ。さりとて、定法に微塵の誤りがないとは言い切れぬ。世の移ろいにしたがい、法度も変わる。折々に見直し、手を入れることがあってしかるべき」
NHK BSプレミアム/2020年2月21日放送
【脚本】いずみ玲
大岡越前スペシャル [大岡越前]
「ひとってのは、良いこともすりゃあ、悪いこともする。悪党ばかり追いかけて、てめえが正しいと信じ切ってる小役人は、そんなことには気づきもしませんがね」
「母とは悲しい生き物です。子供のためなら、鬼にも、仏にも、なります」
NHK BSプレミアム/2019年1月4日放送
【脚本】尾西兼一
大岡越前3・第4話 [大岡越前]
「いまは借金だけが ふたりをつなぐ細い糸。(肩代わりしてもらって)最後の糸まで切れちまったら、あのひとは金輪際、わたしのもとへ戻ってきません」
NHK BSプレミアム/2016年2月5日放送
【脚本】岡崎由紀子
大岡越前2・第10話(最終回) [大岡越前]
「(宗春様は)尾張61万9000石の権勢をたのんで、勝てる相手にだけケンカを売っていらっしゃるんだから卑怯です。(それに引き換え、)あの老人は息子が南町奉行だからじゃない、自分が許せないと思う相手なら、誰とでも正々堂々、正面から向って行って、叩き伏せて・・・。見事なものです」
「これからは、わたしも お上を見習い、苦しくても見た目には楽々と走っているような、尾張の領主になってみせます」
NHK BSプレミアム/2014年12月5日放送
【脚本】大西信行
スペシャル時代劇 大岡越前・第9話(最終回) [大岡越前]
「無礼討ちと称して、もし ひとの命を絶つことが許されるとするならば、それは武士が常に、国を思い、民を思うて、国のため、ひとのために、一命を潔く投げ捨てる覚悟の上に生きていればこそ。無礼と断じて、ひとの命 絶つときは、己もまた、天にも、地にも、無礼のない生き方きっとしてると胸張って、言い得ずばなるまい」
「武士にも無礼討ちが みだりに許されぬごとく、町人に仇討ちは無用。人を殺せば人殺し。罪人となり、罰を受けねばならぬのが、上様のお膝下、江戸の定め。大切な江戸の人を、うかと罪人にはさせられませぬ」
NHK BSプレミアム/2014年1月24日放送
【脚本】大西信行