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経世済民の男・第4話 「小林一三・後編」 [経世済民の男]

「泥棒だ。統制なんてのは、結局、法で化粧した泥棒だ。だいたい、国がそんな発想しかできんから、事変も終わらせられんのだ」



「お父さんは政治には まったく むいてないと思います。お父さんは自分が正しいと思うことを譲れない人やないですか。政治というのは、正反対の調整の世界ですよ」



「(軍部主導で)資本は国家が管理し、経営権も握り、生産も管理し、賃金は画一化する――。これのどこが共産主義じゃないというんだね。こんな体制は人間の本性に合ってないんだよ。人間の本性とはね、欲だ。我欲だよ。働けば給料が上がる。ならば、頑張って働く。息子を学校に上げてやりたい。ならば、頑張って働く。世間に認められたい。ならば、頑張って働く。そういう ちっぽけな、切実な、そういう希望のもとにしか、活力を出すことはできないんだよ」



「戦争するのに(物資が)足りないのなら、法律を作って、全部 自分たちのものにすればいい。そうすりゃ、なんとかなるだろうって・・・。子供でも できる発想だよ。きみたち(企画院)が、この国の誇る頭脳だというのなら、この逆境を飛躍に変えるぐらいの案を出したらどうかね。ああ、この手があったかと、膝を打つような体制でも作り上げろって言ってんだ」



「真の一等国とは、この国に生まれてよかったと思える国――」



「わたしはね、(中略) この国は素晴らしい国になるという結論を持ってます。ただ・・・ただ、そうなるには、ひとつ条件があるんです。それはね、みなさんが全員、働くことです。働くというのはね・・・働くというのは、本来、とても楽しいことなんです。夢を描いてね、知恵をしぼる。努力をする。その果てに、笑ってくれる人がいる。そして、その対価として報酬がついてくる。これがねえ、楽しい。いやもう実に楽しいことなんですよ。自分の人生がここにあると感じることができる」



「努力はね、絶対に報われなきゃなりません。報われると、うれしいでしょ。立場が変わったら、今度は報いようとするでしょ。そういう循環を持つ社会は、頼もしいことになると思うんです。みなさんは知らないでしょうね。働いても、働いても、報われない。そんな時代が長く続いてしまいましたからね。ですが、みなさんは とにもかくにも(戦争を)生き抜いてここにいる。生き抜いて、いまここにいることができる。ここまで、今日まで、来られたのだから、きっと遠くない未来、この国は頼りがいのある国になります。この国で働くことが誇りであり、得であり、物心両面に報われることが最も多い国になると思います。みなさんなら、必ずできる。そう期待しています」


NHK/2015年9月12日放送
【脚本】
森下佳子
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