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天 赤木しげる葬式編「アカギと7人の男たち」 [天]

「冷たい人間が(オレの死の段取りをつけるなんて)こんな面倒なことに首を突っ込むもんか。冷たいやつってのは、いつだって傍観者だ」



「オレたちは もともと無生物だった。ひとは さかのぼれば、その昔、砂つぶ・・・海に溶けたちりだの、砂利だのの よどみ みたいなもんだったんだろう。そこに原始的な生命が生まれ、進化に進化を重ね、人間になった。だとすれば、つまり無生物の中に生き物の素、種があったってことになる。その種ってのは、ある意志、意識みたいなもんだったんじゃねえか。つまり、無生物の中にある、生命になろうとする気持ち。それはイコール、計りを越えたオレたちの生命なんじゃないかと。死ぬことは、その命に戻ることだ。消滅しようがねえのさ。すでに いまあるものは存在し続ける、形を変えてな。そういう意味じゃ、まあ、不死だわな。死ぬことは、決して おっかなくなんかねえんだよ」



「オレの見てきた限りじゃ、あったかい人間は、あったかく死んでいける」



「おめえ、いまロクに生きてねえ。苦しむぜ、それじゃあ・・・死のきわ、死の淵で。(中略) おまえは成功を積み過ぎた。動けねえだろ・・・おまえ いま動けねえだろ、満足に。まあ、最初は必要な、意味ある成功だった。勝つことによって、ひとの命は輝き、光を放つ。そういう生の輝きは、最初、成功とつながっていた。なのに、どういうわけか、積み上げていくと、ある段階でその性質が変わる。成功は生の輝きでなく、かせになる。いつの間にか人間を支配し、乗っ取りにくる。成功が、成功し続ける人生を要求してくる。本当は、あえてここは失敗をする。あるいは ゆっくりする。そんな選択だって、ひとにはあるはずなのに、積み上げた成功がそれを許さねえ。(中略) おまえは成功という名の棺の中にいる。もう満足に動けない。死に体みたいな人生さ」



「誰だって、成功してえ。金や地位や名声、そんなものに あこがれる。だが、それは人生そのものじゃない。んなものは全部、飾りだ。その成功に向けての行為、熱量そのものが生きてるってことだ。実ってやつだよ。わかるか。成功を目指すなと言ってるんじゃない。それを気にして、思いわずらい、止まってしまうこと、熱を失ってしまうこと、それが問題だ。いいじゃねえか、三流で。熱い三流なら上等よ」



「(アルツハイマーが進行する前に、オレは自ら命を閉じる。)こういう話になると、どういうわけか、みんな口をそろえて『生きろ、生きろ』の連呼。問答無用に生きなきゃいけねえって話になるんだが、果たして本当にそうか。それって、ただ生かすだけの医療、ただ患者を延命することに躍起の医者たち、そんな連中の言い分と基本的におんなじじゃねえか。患者本人の意志なんて知ったこっちゃねえ。1分でも、1秒でも生かしゃオッケー、万々歳って、おかしくねえか、これ。いいんだよ、ひとは死んで。オレは死ぬよ。命は二の次。それより、自分が大事だ。肝心のオレが消えた命に、どんな意味がある。(中略) たしかにオレが丸ごと消えるわけじゃなく、なにかが残るんだろうが、いらねえんだよ・・・そんな自分は」


テレビ東京/2019年12月28日深夜放送
【脚本】
宮本正樹/【原作】福本伸行
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