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風よ あらしよ・第3話(最終回) [風よ あらしよ]

「公務執行妨害の罪――。それは言いがかり以外のなにものでもありません。わたしは、正しくないことが、あたかも正しいことのように おこなわれていることに抗議します。(中略) 権力をかさに着たあなたたちは、わたしたちより弱い」



「ぼくは軍隊に入りたくて入った。だが、そこは ぼくにとって苦痛の場所でしかなかった。規律の厳しさなど どうでもいい。苦痛なのは、尊敬も親愛も感じられない連中を上官として、やつらに服従すること。なによりも、自由を奪われることは、死ぬのと一緒だ。ぼくは ただ個人の自由が尊重される世の中を作りたい。ご主人様に対して、どれだけ従順になれたかで、その人間が役に立つとか、立たないとかが決まってくる、そんなバカバカしい世の中なんて、クソくらえだ」



「助け合って、寄り添って、知恵を絞ればいいんです。春は種を植えて、夏は互いに扇いで、秋は月を見上げて、冬は温もりで暖を取る――。(中略) こうすれば、きっと寒さも、貧しさも、しのげるわ」



「どさくさに紛れてやるのは、革命ではない。(関東大震災で)多くのひとが、家もなくなり、食うものもなくなった。(いま)変なことをして、困っているひとを、なお困らせては いけないんだ。テロとアナキズムは違うんだ。自分よがりの革命なんて、クソくらえだろ」



「権力で自由を奪うことはできない。まわりに置くのは、絶対に盾つくことのない人間のみ。あんたらは所詮、奴隷だ。批判されるのが、そんなに怖いか」



「わたしたちを どこまでも厳しく取り締まって、涙どころか、血のションベンも出ないぐらい しぼり上げて、捕まえればロクに話も聞かずに威圧する・・・逆らえば こうなるんだって、恐怖心を植えつけ、なにも言えなくさせ。上からの命令に従うだけで、なにが楽しいの。いざというとき、二つ返事で動いてくれる、脳ミソのない兵隊ばかり。震災で苦しむ人々を目にしても、あなたたちが考えるのは、どうしたら自分たちの地位が おびやかされずにすむか、どうしたら いまより出世して、弱い者の上に立てるか、そんなことばかり。とにかく、はっきりしているのは、あなたたちは民衆の幸福なんて、少しも考えていないってことです」


NHK BSプレミアム/2022年9月18日放送
【脚本】
矢島弘一/【原作】村山由佳
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風よ あらしよ・第2話 [風よ あらしよ]

「あのひと(平塚らいてう)は なんだかんだ言っても、お嬢様だからね。青鞜せいとう社も最初のうちは貴族趣味みたいなとこにピッタリはまったんじゃないかな。でも、彼女には いささか風が強すぎた。世間によるところの風が強くなればなるほど、もろい。その点、野枝のえさんは違うでしょ。風が強くなればなるほど、前へ前へと進む。平塚さんよりも、ずっと遠くまで歩いていこうとしている」



「わたしは所詮、書くだけの人間。本当は それしかできないのに、多くのことをやりすぎた。結果、疲れて、ひとの前に出るのが嫌になって・・・いま、ここにいる。だから、書くものがなくても机に向かうのは、せめてもの罪滅ぼしね。これで、机にも向かわなかったら、バチが当たるわ」



「(自由恋愛の実験なんて)芝居がかって難しいこと言ってましたけど、ただ単にスケベなだけじゃありませんか」



「あなたは随分と簡単に考えておいでのようですけど、多角的な恋愛関係を結ぶという選択は、ここにいる神近かみちかさんにとっても、わたしにとっても、そして奥様の保子さんにとっても、大変 重要な問題なんです。きっと、あなたには痛くもかゆくもないんでしょう。だけれどね、大杉さん。わたしたち女は満身創痍なんですよ。もし、あなたの言う自由恋愛をわたしたち女が受け入れた瞬間から、世間の目にさらされて、ハレンチだ、不道徳だ、無分別だ、愚かだと、散々にそしられる。普通に表を歩くことさえできなくなる――。そういうツラさを、男と女の間に横たわる不公平を、大杉さん、あなたは一度でも まともに考えたことがありますか。わたしたち女が生きていく上での苦しみを、ホントに考えたことがありますか」



「強い向かい風に立ち向かうためには、ふたりは一緒にいるべきなんだ」


NHK BSプレミアム/2022年9月11日放送
【脚本】
矢島弘一/【原作】村山由佳
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風よ あらしよ・第1話 [風よ あらしよ]

「警察は いま本気よ。世の中に物申せば、(赤の)主義者と見なして取り締まる。そこには男も女もない」



「世間にどう思われるかなど、どうでもいいです。そんなことばかりを気にしてる女など、新しい女ではありません。人間としての自我に目覚め、きちんと自覚した上で踏み出す――。それが、わたしたち青鞜せいとうが掲げる新しい女です」



「わたしは つい このあいだまで、女の仕事はまきを運び、飯を炊き、洗濯をすることだと教えられました。学校を卒業したら、妻になり、子を産み、夫に従順にしたがう――良妻賢母こそが女の役目だと教えられました。しかし、(中略) わたしたち新しい女は、いままでの女の歩み古した足跡をいつまでも探して歩いては行きません」



「新しい女は、多くの人々の行き止まったところより さらに進んで、新しい道を、先導者として行くのです。しかし、そこには当然、危険と恐怖があります。未だ知られざる道の先導者は、峠を越え、断崖を登り、谷を渡り、草の根に すがらなければなりません。(中略) 先導者としての、わたしたち新しきの女の道は、結局のところ、努力の連続に ほかならず、確たる自己を生きる強きひとが創り上げるものなのです」



「(青鞜社の講演、)あれは難しいことを言ってますが、ただの征服階級の思想です。しかし、いちばん最初に出てきた、あの女学生みたいな子――彼女だけは違うように感じました。いよいよ本物が出てきた。十九、二十歳はたちの女が発する言葉じゃない。男にも、あんなのは少ない。久しぶりに気持ちが高ぶった」


NHK BSプレミアム/2022年9月4日放送
【脚本】
矢島弘一/【原作】村山由佳
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