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舟を編む 〜私、辞書つくります〜・第6話 [舟を編む]

「カツはカツとしてカレーと出会い、カレーはカレーとしてカツと出会う。しかしてなんじ、汝としてカツカレーと出会う」



微風びふうは『そよかぜ』とも読めます。いわゆる当て字ですが、熟字訓とも考えられますね。漢字二文字以上の熟語に当てられた、一文字ずつに分けられない訓読みのことです。そよかぜの『そよ』、つまり微風の『微』は、それ一文字では『そよ』とは読めませんよね。『』は『かぜ』と出会って初めて『そよ』になれるんです」



「(書籍の企画が)バンバン中止になってる一方で、バンバン決まってんのが いわゆるインフルエンサー本だからね。フォロワー数は売上予測データのひとつにはなってるよ」



「(松本先生にSNSなんて)ムリムリ。『おはようございます』って打ってるあいだに昼になっちゃうよ」



「より良い辞書を作る上で、紙による制約がかせになっているのではないかと(言われました)。紙はスペースに制限があるから、項目を無限に増やすことはできないし、語釈や用例を最小限に削り込まなければならない。改訂版を出さない限り、情報が古くなっても更新できないし、万が一 ミスが見つかっても訂正ができない。デジタルにすれば、それらの制約はなくなり、より良い辞書作りを目指せるのではないかと・・・。『大渡海だいとかい』のデジタル一本化は、顧客より、むしろ われわれ編集部にとってメリットが大きいというのが、社長はじめ上層部の見解です」



「枷じゃない。(中略) その制約は、辞書をより高みに運ぶ翼だ」



「ナイフだと思った言葉が、本当は花束だった」



「紙の辞書なんて、陳腐化するものの代表かもしれない。でもな、違うんだよ、天童くん。紙の辞書に刻み込まれた情報は、その時代 時代の記録でもあるんだ。価値があるんだよ。(中略) 岸辺さん、きみが一石を投じてくれた『恋愛』の語釈――。いつかきっと すべての辞書から『男女』や『異性』という文字が消える日が来るって、いまはオレも思ってる。でもね、かつてはあった。恋愛が異性間だけのものだって思われていた時代が確かにあった。その記録を残しておくことは、とても大切なことなんだよ。人間がその歴史の中で、いつ、なにを手放し、いつ、なにを獲得したのか、紙の辞書にはね、その記録が詰まってる」



「紙の辞書をデジタルの付録にするんです。『大渡海だいとかい』のメインはデジタル(にするのが会社の方針なら)それ単品でも買えるけど、紙の辞書付きのものも選べるって感じで。(中略) 間違えました。付録じゃないです。添え物じゃなくて、特典です。マンガとかDVDとか、豪華版ってあるじゃないですか。あんなイメージでした。デジタルの豪華版の特典が紙の辞書。付録じゃないです、豪華特典です。どんな手 使っても、特典でも なんでも 作れたら・・・1冊でも作れたら、あたし 勝てると思うんです。絶対 口コミで広がって、注文バンバン入ります。だって、作るじゃないですか、あたしたち・・・そういう辞書」



「荒木さんは 人生 やり直しても、絶対また辞書 作ってます・・・松本先生に出会って、西岡さんに出会って、馬締まじめさんと、佐々木さんと、天童くんと、あたしに出会って。あたしもです。あたし、もうカツカレーです。熟字訓なんです。(中略) カツとカレーがカツカレーになったみたいに、『』と『ふう』が出会って そよ風になったみたいに、あたしも いままでとは違う あたしになって、もう戻れないです、出会っちゃったから・・・辞書 作る前のあたしには」


NHK BS/2024年3月24日放送
【脚本】
蛭田直美/【原作】三浦しをん
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