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空白を満たしなさい・第5話(最終回) [空白を満たしなさい]

「本当は死にたいわけじゃないという話は、(自殺)未遂の方からも よく聞きます。自殺の原因は単純ではありませんから。それは、ビル火災の一室で、熱さから逃れようとして、窓から飛び降りてしまうのに似ていますよ。ほかに熱さから逃れるすべがあるなら、本当は生きたかったんです」



「わたしたちは つきあうひとの数だけ、いくつも “自分” を持っている。イヤな自分だけじゃなくて、父親の自分や、親しいひとといる自分もいるでしょう。ひとは生きていくには、どうしても自分を肯定しなければ生きていけない。でも、自分を全面的に肯定する、丸ごと愛するのは、なかなかできないことですよ。まずは、好きな自分を見つけることです。その相手と一緒にいるときの自分を大事にしていくんです」


NHK/2022年7月30日放送
【脚本】
高田亮/【原作】平野啓一郎
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空白を満たしなさい・第4話 [空白を満たしなさい]

「誰も人間の苦悩する権利を否定することはできません。それは残酷なことです」



「楽しくても、充実してても、疲労は疲労なんだよな」



「ぼくは疲れてました。普通に結婚して、家を買って、子供を育てるってだけで、なんで こんなに苦しまなきゃならないんだろうって。生きてる時代を恨んだりもしました。でも、もっと働けるはずだと思ってたんです。乾杯のビールみたいなものです。うれしくて乾杯して、最初は ちゃんと飲み干して、また注いでもらう。でも、3杯目、4杯目となっていくと、ツラくなってくる。飲み干すのを待たれてから、また注がれる。勢いあまって、とうとう あふれてしまう・・・」



「ゴッホが自分で自分の耳を削いだのは知ってるでしょう? この絵は、その直後の絵です。(中略) (これは)弟のテオと同居していた頃のゴッホ。ほかの画家たちと交流を求めていた頃のゴッホ。ゴーギャンと仲たがいしたころのゴッホ。そして、晩年の自画像――。あなたの中にも、いろんな あなたがいるでしょう。ゴッホは拳銃自殺をするんです。どのゴッホが、どのゴッホを殺したと思いますか? この耳を削いだゴッホを、ほかの全員が殺したんです。この病んだゴッホを 、寄ってたかって みんなで殺したんです。どうしてだか わかりますか。幸せでなくてはならないだとか、前向きでなくてはならないだとか、そういった欺瞞に満ちた正しさが人間を殺すんです。この自分の耳を削ぎ落とした、危険で、哀れで、病んだゴッホを、健康的で、生きる力のあるゴッホたちが殺すんです」


NHK/2022年7月23日放送
【脚本】
高田亮/【原作】平野啓一郎
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空白を満たしなさい・第3話 [空白を満たしなさい]

「奥様が(中略) 普通に笑っていたら、どうなると思います? あの女は夫が自殺したっていうのに、毎日 快活に過ごしてる。夫が死んで清々してるんだろう。もともと夫婦仲も よくなかったらしい。あの女が殺したんじゃないか。保険金も たんまり もらったっていうし。あの女は最低だ。子供もロクな人間に育たない――。無限に言われるんです。世間というのは、そういうものですよ」



「自殺者の遺族には、笑う権利もないんですかね。あなたは こんな世界に嫌気がさして、奥さんと子供を放っぽり出して、さっさと自殺したんでしょう? わたしは それも あなたの自由だと思いますよ。しかし、世間は(残されて)傷ついたひとの心が完全に癒えてしまうことを、絶対に許しませんからね。ぐじゅぐじゅ、ぐじゅぐじゅ、いつまでも膿んだままで、一生 苦しみ続けるべきだと、まあ、あきれるほど陰湿に思い込んでますよ。明るく振る舞うのはいいが、ホントに明るく生きるなんて、もってのほかだ」



「人間は自分より不幸な誰かが、どうしても必要なんです。さもなくば、不安でおかしくなりそうになる。だから、どこまでも凶暴になれるんですよ」



「あなたの死が、あなたの(生前に)おこなった素晴らしいことを、すべて台なしにして、あなたの人生を否定するなんて、そんなことは決してありません。死は傲慢に人生を染めます。たまたま最後に こぼしたインク壺の色が、全部、一色に染めてしまう――。そんなことは間違ってます。わたしの死と、あなたの死は、わたしたちが生きてる間にした数え切れないほどの行為の、たかが ひとつじゃないですか」



「生きることが素晴らしいというのは、生きることが好きなひとの言うことですよ。スポーツ好きが、スポーツは素晴らしいって言うのと、同じじゃないですか。そもそも好きじゃない人間には、理解のしようがない話ですよ」



「わたしは自分の命をどうしようと、絶対に個人の自由だと思ってますね。(中略) 人間は いずれ死にます。それを ただ待ってるだけの人間は立派で、自分の意志で命の始末をつける人間は けしからんというのは、どんな さもしい価値観なんですか」



「(死ぬのは、個人の)自由じゃない。追い詰められてるから、そう思うだけなんだよ。自分の意志じゃない」


NHK/2022年7月16日放送
【脚本】
高田亮/【原作】平野啓一郎
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空白を満たしなさい・第2話 [空白を満たしなさい]

「彼はね、生きることに殺されたんですよ・・・しかも、幸せに生きることに」



「いまの時代は なんです? 虫けらみたいな個人が家庭を維持するためには、死に物狂いで働くしかない。本当は笑ってしまうぐらい疲れてるのに、充実していると言い換えなきゃならないんです」


NHK/2022年7月2日放送
【脚本】
高田亮/【原作】平野啓一郎
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空白を満たしなさい・第1話 [空白を満たしなさい]

「ひとが ひとりいなくなれば、ひとり分 穴が開くだろ? その穴を いつまでも放っておくわけに いかないんだよ。みんなで一生懸命 埋めたの。おまえは それがちょうど塞がったところに戻ってきてるんだよ。ムリに こじあけようとするな」



「日本なんて呼ばれてるこの一帯は、もう滅んでいくだけです。年寄り連中が、若い連中のエサを血眼になって食い荒らしてる。あのブタどもは、尻ぬぐいは全部 あとの人間に押しつけて、満腹のまま、幸せに死んでいくんです」



「過労死するまで働いても、やっと人並みの暮らしが できるかどうかの世の中で、家族を養うのが幸せ? そんなものはね、余計なことを考えないために思い込まされてるだけですよ」


NHK/2022年6月25日放送
【脚本】
高田亮/【原作】平野啓一郎
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