フェンス・第５話（最終回） [フェンス]
「もしもさ、琉那さんのお友達が琉那さんと同じ目に遭ったとして、その子を『よごれてる』と思う？ そうだよね。その子がされたことは、その子が望んだことじゃない。暴力を振るう人間に問題があるのであって、暴力を受けたひとは なんにも悪くない。家族を作ることはできるし、家族を作るのとは違う幸せを見つけることもできるんだよ」
「桜が一生懸命 考えて出した答えなら、おばあと意見が違ってもかまわないよ。それだけのことで おばあは変わらんさ」
「辺野古が軟弱地盤だって、明らかになったよね。水面下70メートルまでは（杭を打てば、なんとかなるけど）ね。90メートルの場所もあって、とにかく土砂で埋めようとしてるんだけど、どれだけ流し込んだら基地が作れるのか、（工事を）やってるオレたちも わかんないんだよね。（それでも）いつかは（完成）するんじゃない？ 何年先か、何10年先か・・・。（完成しなくても米軍は）困らないよ。普天間基地を使い続ければいいんだから。沖縄のひとたちは なにも知らされないまま、果たされない約束を待つしかない。オレたちはいいよ・・・金かかっても、時間かかっても、損はしないし、技術も試せる。安全保障って言いながら、海の底にどぶどぶ税金を流し込んで儲けられる。よく言うでしょ。沖縄だって基地負担の代わりに、公共工事で儲けてるって。でも、それだってオレらみたいな本土企業が半分は持ってっちゃうわけで、いつまで経っても（沖縄は）貧しいまま。『ヤンキー ゴー ホーム』って叫んでる間に、同じ日本に奪われ続ける。沖縄が かわいそうだ。戦争になったら、真っ先に焼かれるのに」
WOWOW／2023年4月16日放送
【脚本】野木亜紀子
フェンス・第４話 [フェンス]
「（強制性交罪の場合、）抵抗しないと合意とみなされるって・・・抵抗したら殺される場合もあるのに、イカレてますよね。法律に関わるのが男ばっかだから、いつまで経っても変わんないんですよ」
「ネットなんかで見てるから、すぐ近くのことが見えなくなるんだよ」
「（性被害を受けた10代の子が姿を消したとき）心配なのは、次の被害に遭わないか。自己否定から、ひどい目に遭いにいってしまうこともあるので。これくらい大したことじゃない――そう思い込むことで、過去の体験を小さくしようとする。心のバランスをとろうとしてるんだと思います」
「おまえ、（ここの）水道水 飲んでんのか。PFOSだよ、PFOS。（中略） アメリカ国内で大問題になって、規制された代物だよ。米軍が訓練で使う消火剤に含まれてて、あたりの川に そのまんま流してた。抗議しても、日本には法的拘束力もないし、米軍の許可なしには汚染源の立ち入り調査もできない」
「人間が人間を殺す――それが戦争。殺すのも、殺されそうになるのも、精神に負荷をかける。生きて（アメリカに）帰ったのにPTSDで自殺する兵士が大勢いる。戦死者の４倍以上」
「わたしは差別されてる。差別をやめてくれ。言えば言うほどミジメになる。ブラック・ライブズ・マター・・・あれだって、ネットで見たけど、全然 共感できなかった。あんなふうに騒いだって、嫌われるだけ。差別なんて知らなかった子供たちが あれを見て、黒人は元は・・・昔は奴隷で差別される存在だったって知るの。知ったことで始まる差別だってあるでしょ」
WOWOW／2023年4月9日放送
【脚本】野木亜紀子
フェンス・第３話 [フェンス]
「ジェイは基地の外に家を借りて住んでて、（今回のひき逃げは）基地へ出勤する途中に起こした事故だから、公務中の扱いなんだって。（公務は軍事機密で、日本に裁判権はない。）しかもさ、公務中の場合、事故を起こした米兵本人や、米軍ではなく、日本国が責任を負うと（日米地位協定で）決められている。被害者への賠償金もほとんど日本が肩代わり。公務中って言えば、なんでもありじゃん。黄門様の印籠だよね。公務中が目に入らぬか」
「地位協定そのものは変えられなくても、運用の線引きは変えられる。政府に交渉する気がないだけ。もし公務中の事故が内地で・・・東京でバンバン起こったら、どんなか。変えろってなるよね。沖縄だから見ないフリをするし、見ないフリができてしまう」
「東京にいたとき、ないちゃーに言われました。『沖縄は基地がある分、金もらってるんだから、贅沢 言うな』って。そんなに もらってるなら、なんで沖縄は日本一 最低賃金が低くて、貧困率がこんなに高い？ そしたら、『沖縄の努力が足りない』って・・・。生まれたときから そこにあって、国が変える気のないもんを、どんな努力で変えられる？」
WOWOW／2023年4月2日放送
【脚本】野木亜紀子
※ １段目は２名による連続した台詞をつなげたものです
フェンス・第２話 [フェンス]
「高校生の女の子が米兵にレイプされたって言ったら、どうなると思う？ 大騒ぎだよ。基地反対が盛り上がって、県民大会なるかもしれない。そうなれば、レイプは嘘だって、疑うやつが出てくる・・・あなた みたいに。匿名なんていっても、せまい島だよ。家族は？ どんな子なわけ？ どんな服 着てた？ 夜遊びは？ 高校にまともに行ってない？ じゃあ、仕方ないさ。そんなふうに女の子たちが言われるの、何回も見たよ」
「うちなーに溶け込む３カ条、教えようか。基地の話はしない。政治の話はしない。常に笑顔で、すすめられた酒は飲む」
「沖縄は兵隊の７割が海兵隊で、新兵が多いわけよ。軍に入って、最初の赴任地がこの沖縄。図体ばっかりデカイひよっこ連中が、バカンス気分でピヨピヨってやって来るわけ。で、現地の女とちょっと遊んで、短くて半年で帰る。男女トラブルは しょっちゅう。けど、米軍側がこれに関して なんにも言わない。オリエンテーションで『あんまり はめ外すなよ』って、形だけ注意して放牧。この沖縄に解き放つ」
「イーさんたちが、アメジョをバカにすんのは、自分たちのものになるはずだった女を、アメリカの男に取られるのが気に食わないからなんだよ。そのくせ、避妊は女まかせ。沖縄の出生率って、日本一だってね。そりゃそうなるわ」
WOWOW／2023年3月26日放送
【脚本】野木亜紀子
フェンス・第１話 [フェンス]
「その（『LAST CHANCE』って書いてある）看板の裏っ側に回って見てみて。そっちは『FIRST CHANCE』でしょ。で、後ろに（米軍の）基地があるよね。基地からゲート通りに遊びに来たとき、入口がファーストチャンス。で、帰りがラストチャンスってわけ。それね、ベトナム戦争の時代に作られた看板なのよ。出征が決まった米兵がコザで飲み明かして、最後にその看板を見る――。ここを越えると、もう二度と戻ってこられんかもしれない。そういう場所」
「『なんくるない』は、ただの『なんとかなる』じゃないよ。『まくとぅそーけー なんくるないさ』――。誠のこと、正しいことをすれば、なんとかなる。くじけないで歩いていけば、いつか いい日が来るっていう、うちなーんちゅの願いだね」
WOWOW／2023年3月19日放送
【脚本】野木亜紀子
