やすらぎの刻 ~道・第248話(最終回) [やすらぎの刻]
「あいつら、引退したような顔してるけどさ、本当はまだ(役者を)やりたくて うずうずしてんだよ。(中略) おまえが いま書いてる台本をよ、映像化する気のないのは わかってるよ。いいんだよ、それで。ただ、あいつらに脚本を見せてな、あいつらに夢だけを持たせてやってくれよ。夢を見てるうちに、あいつら死んじまうわ。ははは、それでいいのさ。どうせ もう先は短えんだ。ただ、夢ぐらいは持たせてやらねえとな」
テレビ朝日/2020年3月27日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第247話 [やすらぎの刻]
「脚本家のむなしさは、通常ならば完成した台本をプロデューサーに渡し、彼の手から演出家、役者、スタッフたちへと流れ、自分の意図とは少しずつ狂いながら、それが勝手に料理されていくことだ。それは、あるときは脚本家を傷つけ、逆らえない悔しさに唇を噛みしめさせた」
テレビ朝日/2020年3月26日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第233話 [やすらぎの刻]
「地方はその、公共事業ってやつで、山奥の道もどんどん、どんどん、舗装してくれるんですがね。その舗装された道を通って、若者は町へ行ってしまう。舗装は逆に、過疎を作るんですよ」
テレビ朝日/2020年3月6日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第225話 [やすらぎの刻]
「それは原生林の奥にあって、樹齢およそ400年。朽ちかけ、しかし、凛と立っていた。あの木のように、わたしは死にたい。誰からも悲しまれず、誰からも忘れられて」
「布団の外に手が出てたから、入れてやろうと思って、その手を持ったらよ、あんまり細くて。急にオレ・・・オレ、涙が出てきちまってよ。むかし、あいつが女相手に偉そうにしゃべってたのを思い出したんだ。人間の体は70パーセントが水でな、生まれたばかりのときは80パーセント水なんだって。それが年を取るとよ、60パーセント、50パーセント、最後は45パーセントになるんだそうだよ。あいつ、偉そうに講義してたな。それがいまはよ、まるっきり水気が抜けちまいやがってな」
テレビ朝日/2020年2月25日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第216話 [やすらぎの刻]
「教えてくんなよ、お偉いさんよ。オイラ、バカゆえ、さっぱり わからん。お国ってもんがよ、よくわかんねえ。生まれた途端に国民なんだと。否も応もねえ、国民なんだと。戦争はじまりゃ、お国のためだと満蒙開拓すすめられてよ。どでかい土地をくれるっちゅうから、つい うかうかと乗っちまったら、なんのこたあねえ、半分ペテンだよ。戦局悪化で、根こそぎ徴兵。赤紙ひとつで、駆り出されてよ。たちまち敗戦、裸にされてよ。家族と離れて、大陸ウロウロ。税金 払ったこれが お礼か。そりゃなかろうぜ。オレの一生、お国はどうやって報いてくれんの」
テレビ朝日/2020年2月12日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第206話 [やすらぎの刻]
「死はさ、誰の上にも平等にくるよ。オレにも、ここにいる誰の上にもね。死を怖れるなって、悟ったひとは言うど、そうはいかないよな。怖いよな。誰も、どうなるか、そんなことわからないんだし。みんな、怖いんだよ。当たり前だ。おまえは笑いでごまかそうとしてるけど、そんな必要はないんだ。遠慮なく、怖がれよ。怖がって、震えろよ。震えたほうが、カッコいいぜ」
テレビ朝日/2020年1月29日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第203話 [やすらぎの刻]
「天国への階段は長いんです。長くて、遠いんです。めぐみさん 見てると、わたし そう思います。そんな簡単に行き着けるものじゃありません。先生ね、6合目ぐらいから、階段は急に雲の中に入るんじゃないかと思います。そこまでの道のりは きついんですが、一旦 雲の中に入ってしまうと、急にラクになるんじゃないかと思うんです。なんでしょうかね、その雲の中には、なにか麻酔作用を起こすような成分が含まれているんじゃないでしょうかね。(中略) おそらく、めぐみさんは いまごろ7合目、8合目ぐらいのところを、天国を目指して のんびり歩いているような気がします。ああやって、独りで のんびりと歌を歌いながらね。(中略) この2、3日ずっと、めぐみさん、苦しい顔しないんですね。きっともう、雲の麻酔を吸って、お花畑を歩いているんだと思います」
テレビ朝日/2020年1月24日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第200話 [やすらぎの刻]
「向井さんはパーキンソン病で、それに老衰が加わって、3日ほど前に意識を失くしたんです。われわれとしては、このまま静かに息を引き取られるのを お待ちするのが最善の策と考えました。ところが、まったく音信のなかったお嬢さんという方が見えまして、なんとか少しでも命をつないでほしいと言い出したんです。つまり、胃瘻による治療です。腹部の表面と胃壁に小さな穴を開けてカテーテルを通し、そこから栄養を送り込む方法です。たしかに、それをすれば物理的に延命することは可能です。しかし、ご本人に意識はありませんし、よくなる可能性も まったくありません。しかも、それをしてほしいという娘さんは こちらに任せっぱなしで、看病しようという気配もありません。ただ生かせられるなら生かしておいてやりたいと、感情的に言われるばかりです。ご家族が望まれるのに胃瘻をしなくて亡くなったら、保護責任者遺棄致死罪として、つまり不作為の殺人として、(医師の)わたしが刑法で罰せられることになります。刑法218条と219条です。明治時代に作られた法律です。(中略) 周囲はともかく、患者本人にとって、それは果たして望ましい道なのか。そういう疑問をわたしは持ってきました。(中略) でも、ご家族に頼まれた以上、医者としては逆らう術がないんですよ」
テレビ朝日/2020年1月21日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第195話 [やすらぎの刻]
「わたし、大むかし 好きだったひとに言われましたの。自分を清く持て。そうすれば、ひとの心を洗うことができるって。わたしはその言葉を宝物にして、いままで生きてきましたのね」
テレビ朝日/2020年1月14日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第194話 [やすらぎの刻]
「(お辞儀をするとき)ここ(へその上)で手を組むのは、それ韓国風。最近、みなさん そうなさるけど、本来の日本風はもっと下、ここ。その お辞儀だとエレベーターガールよ。お間違いにならないで」
テレビ朝日/2020年1月13日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第176話 [やすらぎの刻]
「まったく、近ごろのな、医学ってのは どうかしてるぜ。延命のことばかり考えやがってさ。ラクにすることを一向に考えてくれないんだよ。日本にはさ、胃瘻をつけた寝たきりの高齢者が30万人いてさ。で、毎年、1兆から2兆の税金を使ってるんだ。ところがだ・・・ところが、ほかに助ける方法はいくらもあるんだ。あるにもかかわらず、それをおこなわないのは、ほら、例の保護責任者遺棄致死罪、この法律に問われるからだってんだ。そんなバカな言い草があってたまるもんか。まったく いまの法律家どもは、どうかしてやがるぜ。なあ、くだらねえことに、あんた、国費を使いくさってさ」
「(こうして またきみに会えたなんて)ホントに夢のようだ。これがオレの入舞かなあ。世阿弥の言葉でね、人生最後の舞という意味ですよ」
テレビ朝日/2019年12月10日放送
【脚本】倉本聰
やすらぎの刻 ~道・第165話 [やすらぎの刻]
「『霜を踏む 土のなき街 東京都』――。わかりますなあ。土中の水分が霜になる。その土がないから、霜も なかなか はっきりと見えない。近代文明は俳句の世界をどんどんと滅ぼしていきますなあ」
テレビ朝日/2019年11月25日放送
【脚本】倉本聰