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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第8話(最終回) [行列の女神]

「ラーメンが大衆料理として日本に普及したのは戦後になってから。食べる側にとっても、作る側にとっても、安くて、手っ取り早いからこそ、ラーメンは人気を博した。その実情は、日本伝統の そばや うどんが手打ちで作られてきたのに対して、ほとんどが機械打ちの麺。そして、本来は焼き豚を意味する言葉なのに、いまや煮豚が主流となったチャーシュー。これも、醤油ダレの だし素材にするための、店側の都合でしょ。フェイクにフェイクを重ねて作られてきたものには、本物も真実も存在しない。日本の食文化の代表を担わせるような高尚なものには、なり得ないわよ。もちろん(人気はあるわ)よ。ラーメンはB級グルメの王様。だから、それで満足しなさいって言ってるの」



「あなた、このあいだ『ラーメンのワクワクの正体はアンバランスだ』って言ってたけど、(それは答えのひとつでしかない。)当たり前でしょう。アンバランスであることを目的にしたラーメンなんて、あるわけないんだから。アンバランスは、あくまで結果。じゃあ、その結果を生み出す原動力はなに? 自分の個性をもっとラーメンに出したい。もっとおいしい、もっと新しいラーメンを生み出したいっていう、職人の思いでしょ。(ラーメンのワクワクの正体は、フェイクから真実を生み出そうとする探求心と情熱――)」



「オリジナリティの欠如――。それが敗因でしょう。きみは たしかに味覚も調理センスも優れていた。しかし、それは すでに存在するラーメンを模倣したり、改良したりする才能です。一から新しい味を作り出す才能ではなかった。(自分の力で新しい味を創造できないきみに、うちをつぶすことはできない)」


テレビ東京/2020年6月8日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第7話 [行列の女神]

「(とんこつラーメンは わざとアク取りをせずに、臭みを残したりするし、煮干しの頭や はらわたを取らずに、わざと苦味を生かすこともあるけど、それは)味の話だけではないですよ。濃厚さを目指すために、ペーストのようなドロドロのスープを使ったり、ボリューム系では食べきれないほどの量を盛ったり・・・。ひとによっては、もしかしたら抵抗を感じるかもしれない――。そういうスリリングな側面が多くのひとを病みつきにする。それがラーメンの持つ魅力でしょう」



「あなた、たしかに汐見しおみみたいな天才型じゃないわ。凡人よ。ひと一倍 努力して、セオリーを踏まえる――。でも、そこから少しでも はみ出そうとすると、とたんにダメになるわ。でもね、凡人には凡人の戦い方ってものがあるでしょ。職人にとって、いちばんの敗北は、センスがないことなんかじゃない。歩みを止めてしまうことよ」



「『麺房めんぼうなかはら』の いちばんの問題点は、食事満足度の低さ。(中略) 1990年代のラーメン ニューウェーブのころ――。そのころ増え始めた女性客を意識して、(あなたの店は)あっさり、上品、ボリューム控えめを売りにされてた。そのころと同じ感覚でやってれば、(いまの客足の減少は)当たり前の結果です」



「あたしは凡人ですから、空から ひらめきが降ってきたりはしません。だから、とことん 地べたに こだわることにしました。自分の中に蓄積されてきた体験や記憶、積み上げてきた努力や試行錯誤、そういうものを足場にして、考えて、悩んで、動いて、職人として高みを目指します」



「中原さんが名古屋コーチンの『丸鶏拉麺まるどりラーメン』で注目を集めていたころ、あたしはアユの煮干しを使った薄口醤油ラーメンで勝負をかけてました。でも、その勝負に勝つことはできなかった。スープが薄くて、コクも、パンチもない まずいラーメン――。それが、わたしの薄口醤油ラーメンに下された評価だった。ある日、やけになってラードをぶち込んだラーメンを客に出したら、客はそれを『うまい』と大絶賛した。(ラードなんか入れたら)アユの煮干しの繊細な風味は消し飛ぶわよ。でも、客は大喜び。で、ラードからニンニクを揚げたヘッドに変えて・・・それから店は大盛況。濃い口しょうゆラーメンは『らあめん清流房せいりゅうぼう』の、芹沢達美たつみの代名詞になった。わたしは理想と現実の間で戦っています。(中略) かつて100点満点だった『丸鶏拉麺』を、いまも100点満点だと信じて しがみついてる あなたは、あたしのライバルなんかじゃない」



「料理は普通、バランスを整えるものですけど、ラーメンはその逆。アンバランスであることが “ワクワク” の正体なんじゃないかって」


テレビ東京/2020年6月1日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第6話 [行列の女神]

「ラーメン屋っていうのは、趣味でも、道楽でも、サークル活動でもない。ビジネスなのよ。だから、まずはどんな形であれ(同業他店に)勝つこと。勝たなきゃ、なんにも始まらないんだから」



「なんで泣いたんですかね、オレ。自分でも、わからないんですよね。繁盛したことがうれしいのか、こだわりを捨てたことが悔しいのか」



「リサーチを尽くして顧客のニーズを探ったり、トレンドを追いかけたりするのは、コンサルタントとして当たり前の仕事です。(中略) でも、ときとして その手法には落とし穴があるわ。それは、お客をナメてしまうってこと。この連中なら、このメニューに食いついてくるだろう。この程度の味で満足するだろうっていうふうにね。たしかに、みんながみんな、鋭敏な味覚を持ってるわけじゃない。味バカ、舌バカと呼べるお客も、中にはいるでしょう。でも、だからといって、店やフードコンサルタントが、お客をバカにしていいっていう理屈はないのよ。お客様のニーズに応えることと、お客のレベルを見切った気持ちになることは、まったく別物。よく覚えておいてね」


テレビ東京/2020年5月25日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第5話 [行列の女神]

「(バイト代なくてもいいから、大好きなラーメン店で働きたいと言ってる子を)仮にタダで雇ったとする。1日目は1時間も経たないうちに、仕事がキツイと弱音を吐く。2日目には『やっぱりバイト代よこせ』と不平を言う。そして、3日目には来なくなるわよ。(その子はバイト経験がないんでしょうね。経験があれば、時給をもらう大変さを理解してるはずだし、軽々しく『タダでもいい』なんて言わないはず。)お金を払うということは、仕事に責任を負わせること。お金をもらうということは、仕事に責任を負うことよ。汐見しおみ、お金の価値を理解してない人間の仕事は、必ず無責任なものになるから、よく覚えておきなさい」



「調理に使っていた おたまに直接 口をつけて味見をしたり、包丁で(もやしの入った)ビニール袋を切ったり、衛生面で とても許される行為ではありません。お客から見えない厨房で、そういう習慣に なれている料理人は、たしかに います。ですが、それは業界の常識であっても、世間の非常識ですよ」


テレビ東京/2020年5月18日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第4話 [行列の女神]

「たしかに彼は、無知で、無計画で、無鉄砲だった。でもね、中途半端に自分の実力を知ってる人間より、そのほうがチャレンジできるって場合もあるのよ」



「飲食業、特にラーメンは、高い調理技術や豊富な知識があって、慎重に準備を重ねて開業したからといって、成功するとは限りません。(中略) 逆に無謀としか言えない形で店を開いても、必ず失敗するとは限らないでしょう」



「わたしたちは神様じゃない。誰が成功して、誰が失敗するかなんて、事前に予測するのは不可能よ。でも、だからこそフードコンサルティングビジネスに携わる者は、『やる』と言ってるクライアントに、『やるな』という助言だけは、絶対にしてはならないの。(中略) わたしたちは『やる』といった人間に、採算の取れる範囲内でベストの助力をするだけ。やることのリスクは、そのクライアントに背負ってもらうしかないんだから」


テレビ東京/2020年5月11日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第3話 [行列の女神]

「あんなに おいしい食べ物(ラーメン)をいままで食べさせてくれなかったなんて、虐待です。洗脳です。そんなひとのことを親だなんて、思いたくありません。わたしの本当の母親はきっと・・・きっと、ラーメンなんです。わたしの この体には いま、お母さんの血じゃなくて、ラーメンのスープが流れてるんです。指紋だって、もうすぐ なるとの渦巻みたいになるんだから。覚悟しておいてよね」



「ああもう、社長も、お母さんも、わたしのために争わないでください」
「(いや、争ってないよ、これっぽちも。)奪い合いじゃなく、押しつけ合いですからね、全力で」



「(なにもしないで結果を待つ?) それじゃ、つまらないでしょ。ケンカの火種がくすぶってるなら、薪くべて、ガソリンかけて、ついでに火薬も投入しないと」



「料理がおいしいだけじゃ、店は成功しないのよ。あなたの つけ麺は たしかに おいしかった。でもね、ほとんどの客は複数の店を食べ比べて、おいしいほうを選んでるわけじゃないの。料理対決なんて、マンガやテレビ番組の世界の話。客のほとんどは保守的で、知名度とか、誰かの推薦を頼りに店を選んで、そこで食べた味に満足して帰っていく。つまり、彼らは情報を食べているのよ」



「あの子を見てると、なぜイラっとくるのか、理由が わかったような気がするわ。ただ おいしいものを作ればいい、そう信じていた むかしの自分を思い出して、うらやましくなっちゃうからよ」


テレビ東京/2020年5月4日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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行列の女神 ~らーめん才遊記~・第1話 [行列の女神]

「いいのよ、お客様の立場なら感想は自由だから。でも、フードコンサルティングの現場では『いまいち』の一言で片づけるわけにはいかないの。(中略) どのあたりが いまいち だったか ちゃんと説明して、改善策を示さなきゃいけない」



「あの京来軒の夫婦みたいなのを、この業界でなんて言うのか教えてあげましょうか。『能なしの怠け者』って言うのよ。あの老夫婦は長年 なにもせず、常連客の存在に甘えて、店がつぶれそうになって初めて危機感を抱いた。フードコンサルティングに頼ってくる客の中には、ああいう自立心のない連中がたくさんいるわ。親身になってもムダ足になることが多いから、気をつけることね」 →類似


テレビ東京/2020年4月20日放送
【脚本】
古家和尚/【原作】久部緑郎
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